生活相談・支援事業担当の結城です。今回はお役立ち情報第10回、テーマは家具什器費と住宅維持費です。家具什器費については、第2回「クーラーの購入費用」でも少し詳しく書いていますが、住宅維持費については聞いたことがないという人も多いのではないでしょうか? これらはどう違い、どんな場合に使えるのでしょうか?
住宅維持費と家具什器費の考え方の違い
東京都生活保護運用事例集によれば、家具什器費は「住居としての機能の維持とは直接の関係はないが、最低生活に直接必要で、生活の利便性を向上させる物品の購入経費」であり、住宅維持費は「家屋本体又は家屋の従属物の修理、補修その他維持に要する経費で、住居としての機能を維持するのに不可欠の費用」です。
例えば、家具什器費の対象となりうるのは湯沸かし器、冷暖房設備、冷蔵庫、洗濯機などです。一方で、網戸、換気扇、風呂釜、給排水設備のある洗面台などは住宅維持費の対象となり得ます。
どんなときに支給されるのか
それぞれどんな場合に支給されるのでしょうか。家具什器費については第2回の復習となりますが、下記のいずれかの場合で、最低生活に直接必要な家具什器がない時に支給される可能性があります。なお、冷暖房にはさらに追加の条件があります。
①保護開始時
②単身世帯で、長期入院/入所後に新たに住居を確保する時
③災害に遭い、災害救助法による救助が行われず、地方公共団体の支援では足りないとき
④転居した際に、新旧住居の設備の違いにより、新たに家具什器を補填する必要があるとき
⑤犯罪等による被害(DV含む)を受け、生命及び身体の安全を守るために転居するとき
住宅維持費については、まず補修や修繕の場合には、その責任が賃貸人(大家側)と賃借人(入居者側)のどちらにあるのかが問題となります。大家が所有している設備については、経年劣化や通常使用による損耗が原因である場合、賃貸人に補修等の責任があります。そのため、この場合には住宅維持費は原則として支給されません。この場合は賃貸人に補修等を依頼しましょう。
一方で、賃借人が自分で設置したり、前の居住者が設置した物(残置物)については、自分で補修等をする必要があります。この場合、内容によって住宅維持費が支給される可能性があります。
いずれにしても、生活保護制度の範囲内で支給されるのかどうか、またその金額や支給の方法(立替なのか、先渡しなのか)については福祉事務所のケースワーカーに相談をしてみてください。(結城)
QUIZ.
賃貸住宅から退去する際に原状回復費がかかる場合、入居時に敷金を支払っている場合には、敷金から補填されることとなります。しかし、いわゆるゼロゼロ物件(敷金・礼金なし)の場合には、退去時に新たに支出する必要が生じます。このような場合、生活保護制度の枠組みの中で、原状回復費に充てるお金を支給することはできるでしょうか?
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●前回のQuizの解説
前回は離婚に伴う養育費や慰謝料が生活保護制度上どのような扱いを受けるのか、というクイズでした。あくまでも東京都での話ではありますが、養育費については基本的に「生活費」として渡される性質のものであるため、「仕送り、贈与」と同様とみなされ、全額収入認定されます。
慰謝料については、「保険金、その他の臨時的収入」と同様の扱いとなり、月額8000円を超える金額については収入として認定されます。ただし、慰謝料については「自立更生」に当てられる金額は認定されず手元に残すことができます。「自立更生に当てられる」のがどのような用途かは福祉事務所や民間の支援団体等にご確認ください。