認定NPO法人 自立生活サポートセンター・もやい

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もやいブログ

2024.12.11

おもやいオンライン広報・啓発事業

【連載】生活を支えるためのお役立ち情報(保存版)~第9回  DVと生活保護~

 生活相談支援事業担当の結城です。2024年夏号で一度お休みとなりましたが、生活を支えるためのお役立ち情報が再開です。今回はDVと生活保護についてです。

 つい先日、夫からDVを受けるなどしてうつ病になった大阪市城東区の20代女性が生活保護の申請をしようとしたものの、離婚届などが提出されていないことなどを理由に申請を受け付けられず、その間に身を寄せていた知人から暴行を受けて死亡するという事件がありました

 DVを受けていて生活に困窮しているというケースは決して珍しいものではありません。DVを受けていても離婚届を出していない状態なら保護は利用できないのでしょうか? そんなことはありません。

世帯の認定と「夫婦」

 生活保護制度は「世帯」を単位として保護の申請・適用がなされるという世帯単位の原則があります。

 この「世帯」とは居住や生計の同一性に基づいて判断されますが、夫婦の場合は原則として同一世帯として認定されます。そのため、仮に別居していたとしても同一世帯として認定される可能性があります。しかし、同時に「夫婦関係の解体が明白である場合には、世帯を異にしていると判断すべきものと考えられる」ともされています(生活保護手帳別冊問答集問1-1)。

 DVを受けており、知人宅に避難せざるを得ない状態にあれば、夫婦関係の解体はもはや明白です。そもそも、DVを受けている状況下では「安全に離婚届を出す」ことなど望めないことが多いでしょう。子どもがいたり、経済的自立が困難な場合に離婚を決意することが難しいことも珍しくありません。離婚届が出ている/出ていないというだけで「夫婦関係の解体」を判断することはできません。

 実際、〈もやい〉で相談を受けたケースでは、離婚届を出す前でも別世帯として保護の申請を行うこともしばしばあります。その場合、離婚の意志があるかを問われることはありますが、本人がDVの被害を訴えている状態で「離婚届を出さないと申請を受理できない」などと言われることはほとんどありません(あれば抗議します)。

 なお、一応別居している状態であっても夫婦には民法上の扶養義務がありますが、DV等の事情がある場合には扶養照会等はなされないこととなっています。

身の安全の確保

 配偶者からDVを受けている場合、必要に応じて避難先を確保する必要があります。その場合、福祉事務所は無料低額宿泊所や保護施設などを紹介するか、配偶者暴力相談支援センター等と連携してDVシェルターを確保することが一般的です。あるいは、最初から福祉事務所ではなくDVの相談窓口に行っていたら、DVシェルターに入り、その後必要に応じて生活保護の手続きをする場合もあります。

 そもそも被害者側が逃げなくてはいけないということ自体が理不尽極まりないのですが、どのような方法を取るにせよ身の安全を確保しつつ、必要な支援制度の手続きをサポートすることが行政の責任です。(結城)

QUIZ.
日本では離婚をしても子の養育費や慰謝料が支払われることが少ないとしばしば言われていますが、実際に養育費や慰謝料を受け取った場合、福祉事務所に申告する必要はあるのでしょうか? また、生活保護制度上ではどのように扱われるのでしょうか?

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●前回のQuizの解説
前回のQuizは、すでに支払いを終えた個人年金保険の取り扱いについてでした。東京都の生活保護運用事例集では、「年金等の公的給付としてではなく保険として取扱」うこととされています。そのため、解約金(返戻金)の額などによって保有が認められるかどうか判断されます。ただし、保険料の支払いが終わっていない場合には、継続しての加入は原則として認められていません。

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