こんにちは。生活相談担当の黒木です。
今回は、〈もやい〉で実施している生活保護の申請同行について特集します。
生活保護の申請同行とは、〈もやい〉に相談に来られた方の状況に応じて、
ボランティア相談員が福祉事務所に同行することです。
〈もやい〉では、年間約100〜150件の福祉事務所への申請同行をしております。
申請同行に関して、どのように行われているのか?
どのような思いで相談員は行っているのか?
をお伝えしたいと思います。
生活保護の申請同行は必要なのか?
申請同行が必要とされてしまう現状の問題意識をお伝えします。
現状、福祉事務所に行ったけど生活保護の申請ができなかった、
申請書を作成しても受け取ってくれなかったというご相談もたびたびあります。
申請を受け付けないことは「水際作戦」と言われ、違法な行為です。
具体的には、「若いから働ける」「借金がある人は使えない」など
いろいろな理由をつけて申請を拒まれるケースがあります。
これらに法的根拠はないものの、このような水際作戦が行われる場合もまだまだあります。
ほかにも、「生活保護」という言葉を検索しネガティブなワードが出てきて
福祉事務所へ行くことが不安である、うまく自分の状況を話せる自信がない、
自分の今後の意向を伝えることは難しく、福祉事務所の言いなりになるしかないのでは、と
考えている方などで、一人で行くことをためらってしまう方もいらっしゃいます。
これらの問題の解決には、福祉事務所だけの問題ではなく、
社会全体で「生活保護」に対するイメージも変えていくことも重要だと考えています。
気軽に生活保護に関して情報を得られ、過度に恐れることなく、
福祉事務所に相談ができるというような、本人の意向に寄り添える社会の仕組みが必要なのではないでしょうか。
健康で文化的な最低限度の生活を営むことは私たちに保障された「権利」であり、
その権利を守るための生活保護制度がきちんと利用できるようにサポートする
〈もやい〉の活動は「権利を守る」活動だといえます。
また、相談者の方が〈もやい〉の事務所で生活保護について知り、
(心理的な部分も含めて)準備をしてから申請に行く。
この一連の準備は、相談者自身が自分の権利を知り、
守るための力を身につけるプロセスでもあります。
生活保護の申請について、下記リンクに〈もやい〉の記事がありますので、興是非ご覧ください。
https://www.npomoyai.or.jp/20180717/4677
申請同行の流れ
生活保護の申請同行を行うまでに、まず〈もやい〉の事務所で対面の生活相談を行います。
制度の概要やその前後の流れをこちらからご説明し、そのあと申請書を一緒に作成していきます。
(申請時住まいがない状態の人の場合)申請する自治体を決め、
福祉事務所で待ち合わせする日時を決定します。
当日は、窓口に行き申請の意思を示します。
そのあと、個室に案内され担当者との面談が始まります。
そこでは生活歴や経済状況などを聞かれ、生活保護制度の説明がされ必要書類の作成が行われます。
そのあと、担当のケースワーカーが紹介されます。
ここまでが申請当日の流れで、状況に応じて幅はありますが短くても約2時間かかることがあります。
当日の同行者の役割としては、
福祉事務所が法律に準拠した行いをしているかを確認したり、
申請者がうまく説明できず心が折れそうになったり、
また福祉事務所側の誘導に流されそうになったりした時、
申請者の意思を尊重しながらで第三者的な立場で助言や提案を行うということをしています。
以上が、〈もやい〉で行っている申請同行の基本的な流れです。
一般的には、生活保護の制度自体は、非常に見えにくいものだと思います。
より多くの人に生活保護の申請について知ってもらい、
少しでも日本の現状が変わっていけばいいという思いで活動しています。
今回の記事で、申請同行がどのように行われていて、相談員の立ち位置について
一部分ではありますが知ってもらい、制度につながる一助になればと思っています!
では、ここから相談員がどのような思いで申請同行を行っているのかを
複数名の方にインタビューした内容をまとめました。
少しでも現場で起きていることを知っていただければと思います。
Q1.申請同行がなぜ必要だと思いますか?
・相談者の中には、いろいろなところへ相談しに行くたびに傷ついてきた経験がある人もいます。
相談するという行為まで、何度も何度も迷い、覚悟を決めて、福祉事務所に相談に行ったら
「なんで来たのか?」と言われ、心が折れるような経験をしている人もいます。
Q2.申請同行をする上で、大切にしていること、気を付けていることはありますか?
・〈もやい〉の相談員側が、福祉事務所に対して責めるような気持ちを持っていると、
相手側も気づきます。そのため、相手に協力を仰ぐようなコミュニケーションを意識しています。
さらに、申請者にとってはこれから住んでいく地域になるため、
福祉事務所との申請という最初の関係性構築が重要な部分になるのではないかなと思っています。
・福祉事務所の担当の方の中には威圧的であったり、
必要のない質問をしてくる場合も残念ながらあります。
相手側に対して、そういったことがあったときに、
相談者の不利にならないように毅然とした態度をとっています。
こうした態度をとることで、相談者にとっても心強い存在であるよう心掛けています。
・生活保護の制度上、どうしても本人の意向に沿えない部分もあります。
その部分で、本人とともにどこまで実現可能なのかが気にするポイントになっています。
そこに付随して、本人の気になる部分に関しては生活保護手帳などを
一通り調べて根拠となる部分を確かめてから行っています。
・約束した時間より早く着くようにしています。
というのも、皆さん申請前で不安や緊張を抱える方もいらっしゃるため、
少しでも不安を和らげられたらと思っています。
申請をする前に、不安や疑問点を聞いてから、ある程度スッキリした状態で申請に行けるようにしています。
Q3.これから申請する申請者に対して、伝えていることはありますか?
・申請者の方は、不安に感じられている方もいます。
申請は権利ですので、堂々と伝えましょう、ということを伝えています。
また、事前に心の準備をするためにも、申請自体は2〜3時間と時間がかかること、
また、多くの事を聞かれますが、ご自身の話せる範囲で、
正直に伝えてくださいというようにお伝えしています。
Q4.最後にひとことお願いします。
・〈もやい〉でできることは少ないですが、
水際作戦などの現状を鑑みると、いること自体にも意味があると思います。
・必ずしも現状の制度で申請者の方の課題がすべて解決できないこともありますが、
申請する人にとっての最善を尽くことを大事にしています!
・〈もやい〉の相談に来てくれて申請同行まで行くのはある種、奇跡みたいなことだと思っています。
来てくださったからには、全力でできることを行っていきます。
—相談員のみなさん、申請同行についてのインタビューにご協力いただき、ありがとうございました!
そもそも、福祉事務所が必ず申請を受理し、
高圧的な態度をとらなければ、同行者は必要ないのです。
申請同行が必要とされてしまう現状を少しでも変えたいというのが
〈もやい〉の申請同行という活動の根底にある思いです。
そのため、〈もやい〉では申請に関するお手伝いは行いますが、
あくまでも本人主体で申請してもらい、「同行者がいたから申請できた」ではなく、
あくまでもご本人の意思と力で申請するのだということを大切にしています。
もちろん、申請者だけで申請に行ったとしても必ずしも水際作戦などの問題が起こるとも限りません。
この記事を見て一人で申請するのは難しいこととためらわず、申請に行ってほしいです。(黒木)