〈もやい〉では月に1回程度ボランティア向けの研修を行っています。今回その研修の一環として、川崎にある更生保護施設「川崎自立会」の見学会を行いました。
更生保護施設とは、「矯正施設(刑務所・少年院)から出所・出院した人や保護観察中の人で、身寄りがなく、帰るべき住居がないことや、現在住んでいるところでは更生が妨げられるおそれがあるなどの理由で、直ちに自立更生することが困難な人に対して、一定期間、宿泊場所や食事を提供する民間の施設です(法務省のHPより)。宿泊場所や食事の提供に加えて、自立を援助する支援を通して、再犯・再非行の防止に貢献をしています。
研修当日は、40名近いボランティアが参加しました。その中のボランティアの鈴木隆太さんより感想をお寄せいただきました。
〈もやい〉でボランティア登録している鈴木と申します。
研修に参加した理由は、〈もやい〉での生活相談の面談で元受刑者の相談を受ける機会があり、前歴により「恐い」等の先入観を持っていることに気付いたためです。それにより生活相談に支障が出ると本末転倒となります。そこで、更生保護施設というリスタートの場を見学させていただくことで、自分の中に変化が生まれればと思い参加しました。
更生保護施設とはどんな場所なのか
先方のご厚意により、入居者が生活する施設内も見学をさせていただきました。川崎自立会は最大40名ほどの男性が入ることができる施設です。食堂、一人部屋、複数人部屋、洗面・洗濯室、談話室など、生活に必要な設備が整っている場所でした。
生活環境を提供していることに加えて、社会生活に適応させる指導や、更生計画の立案、就労支援指導、金銭・健康管理、近隣のボランティア活動、レクリエーション行事など様々な社会復帰に必要な取り組みをされています。
自分を省みる機会を提供をする場
入所者の方の特徴として、幼少期に一般的な認識が養われない人が多いとのことでした。例えば、施設周辺でのごみ拾いのときに、今までは空き缶を道に捨てることが「普通」と考えている方がいたという話がありました。 確かに、空き缶をゴミ箱に捨てるという行為は、幼少期に自然と教育され、無意識の内に自分の「普通」になっていることに気付かされました。
施設長曰く、この「普通」が抜け落ちているために、社会とのギャップが生まれやすいというのです。「普通」が抜け落ちる要因として、育った環境・親の存在等、本人ではコントロールできない外的な要因が影響を与えているように感じます。多くの入居者は成人であり、これまでに自分を省みる機会はたくさんあったとは思いますが、全てを自己責任と突き放すこともできないように感じました。
そして、川崎自立会様は、社会復帰の一歩目として「自分を省みる機会」を提供されている場であると感じました。
入所者の方に一つでも何かを持ち帰ってもらう
社会復帰に関してのキーポイントとして、「自尊心」を挙げられていました。
更生保護施設を自分の傾向(だれにも必要とされない自分や、自分で自分を諦める自分など)に気付く機会になれば良いと考えられているとのことでした。これまでの人生を、上記のような自分で過ごしてきているため、簡単には変わることはないと前置きしつつも、「生きざまの触れ合い」「触れ合って本人の心に残る何かを感じ取ってもらう」ことを大切にしているとのことでした。
社会復帰にはハード面の充実も大事ですが、そこで働く人々の熱意・情熱等のソフト面が、入居者の下支えとなっていることを感じました。
見学前に感じていた「恐い」という先入観は、元受刑者の背景を知らなかったことにより、漠然とした不安に繋がっていたと思います。正しい知識とリアルな生活の場を見ることで、彼らも自分と同じ一人の人間であることを学ぶことができました。(もやいボランティア 鈴木隆太)