2024年1月9日から入院していたコーヒー焙煎の中心メンバーGさんが1月19日の深夜に亡くなりました。1月16日頃に容体が急変、17日に「もう長くないかもしれない」と本人から連絡があって2日後のことでした。もやいスタッフが自由に書いていいというので、とても書ききれないけれど、Gさんとのことをつらつらと書きます。

　Gさんとは、ぼくが〈もやい〉に来てすぐくらいに出会ったので7年くらいの付き合いになる。Gさんがコーヒー焙煎を昔からやっていて、ぼくがその担当になって毎週顔を合わせるようになった。

　Gさんは、いつのまにかぼくのことを「田中ちゃん」とか「あにい」とかよくわからない呼び方をするようになって、ぼくもぼくで「こわい顔のおじちゃん」とか「Gちん」とか呼ぶようになった。ぼくのおじちゃんはジャック・タチみたいなスマートなフランス人じゃなくて、ガンバ大阪がすきなコワモテの東北人だった。そういえば最近は「かわいいおじさんを目指してる」とかわけのわからないことを言ってオーバーオールとか買ってたな。ふざけて「まいうー」とか言ってた。あれはかわいいのか。

　Gさんは、コーヒー焙煎の仕事や居場所を誰より大切にしていた。誰かがコーヒー焙煎に来なくなると「おれのせいかなあ」と気に病んだりしていた。まあ半分くらいはその通りだったけど、でもその半分もGさんが仕事熱心で、焙煎の質を落としたくない一心で言ったひとことだったりしたから、あまり責められなかった。

　年始に入院してからお見舞いに行っても、Gさんは「おれのことはいいから早く帰って仕事しろ」と言っていた。その後も病状が悪くなってきて、変な咳が出て、しゃべるたんびに痰がからんで、声を出すのもしんどそうなのに「仕事、仕事」と繰り返した。病室で最後に話したのも焙煎機のことと焙煎メンバーのことだった。

　Gさんは、いろんなことに気を回していた人だった。Gさんが亡くなる当日、昔からの知り合いの湯浅さんが見舞いに来て、「Gさんとパパくらいか、ずっともやいをみてくれているのは。Gさんがこれまでもやいとコーヒー焙煎を守ってきてくれたんだね」と言っていて、本当にそうだなと思った。

　よく冗談みたいに「しんどいしんどい」言ってた人だから、今回の入院もそう言いながら帰ってくると思っていた。ぼくだけじゃなくて焙煎のメンバーも、〈もやい〉のスタッフもみんなが多分そう思ってた。今思えば、ちょっと前から「おれはもう先が長くねえぜ、田中ちゃん」ってうそぶいてたのも、冗談じゃなかったんだね。でもちょっと早いなあ。大阪のココルームにも、おすすめの串かつ屋にもまだ一緒に行けてないよ。ぼくの結婚式にも出たいって言ってたのにな、間に合わんかったなあ、ごめん。

　Gさん、Gさんのいないコーヒー焙煎は変な感じがするよ。ガハガハ笑うGさんの景気のいい大きな声がもう聞けないと思うとさびしくなるな。さびしいけど、みんなでGさんが残した仕事をやっていくよ。だからこれからもコーヒー焙煎を、〈もやい〉を、出会ってきたみんなを、見守っていてください。よろしく。（田中）