認定NPO法人 自立生活サポートセンター・もやい

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もやいブログ

2024.3.26

お知らせおもやいオンライン広報・啓発事業

年末年始のチャット相談&かけつけ支援のご報告

 生活相談・支援事業担当の結城です。この記事では今年の1月2日(火)に行ったチャット相談&かけつけ支援についてご報告します。チャット相談&かけつけ支援は数年前から〈もやい〉では公的機関が年末年始やその他長期休暇に際して実施している事業で、インターネット上でチャットシステムを利用して相談を受け付け、必要に応じて車で現地にお伺いし、休み明けの公の支援までのつなぎ支援を行うものです。

 野宿者支援にかかわったことのある方は「越年越冬闘争」というのをご存じかもしれません。これは主に寄せ場地域(日雇労働市場)で1970年代初めに始まり、年末年始の仕事のない期間、日雇労働者が集まって野営し厳しい時期を乗り越えるための活動です。今でこそ日雇労働者も野宿者も要件さえ満たしていれば生活保護制度が利用できるようになっていますが、当時は「軽作業が可能」というだけの理由で制度から不当に排除されていたため、文字通り越年越冬闘争は労働者の生存をかけた活動でした。今は生活保護制度が利用できるようになりましたが、多くの自治体では年末年始に窓口を閉じているため、日雇いや派遣で食いつないでいる人にとっては一年の中でも厳しい時期であるのは変わりません。

 越年越冬闘争は今も形を変えて各地で取り組まれており、生活保護制度を利用しない、または、できない野宿者の生活を支えています。一方で、「寄せ場の解体」が言われて20年以上が経った今、旧来の寄せ場地域での取り組みを知らない人や、知っていてもなじみがない人が増えています(寄せ場の解体以前から、様々な理由で寄せ場に来れず困窮していた人はいますが)。また、「寄せ場」には日雇労働者が集まっていましたが、今不安定な仕事をしている人びとの多くはネットカフェやカプセルホテルなどに分散しています。そのような人にとって、年末年始は頼りにできるところがほとんどなくなります。〈もやい〉のチャット&かけつけ支援はそうした人びとに届く新たな支援の形と言えるでしょう。

 実際、私は山谷地域の越年越冬闘争と、〈もやい〉のかけつけ支援の両方に参加しましたが、そこで出会う人には明らかに違いがあります。越年越冬闘争では多くの場合高齢男性の野宿者が集まります。一方、チャット相談では若年層や女性からの相談もめずらしくありません。今回は1日で7件の相談を受け、4件で現地に伺いましたが、そのうち1人は女性で、2人が若年男性でした。相談受付がインターネット上のチャット経由という都合もあると思いますが、野宿者が集まる越年越冬ではあまり出会うことがない人びとでした。チャット相談&かけつけ支援で出会った方は、おそらく越年越冬はおろか、寄せ場についても聞いたことがないのではないかと思います。年末年始のチャット相談&かけつけ支援は寄せ場ではリーチできない方に支援をできる数少ないアプローチのひとつだと思います。

 しかし、今まで出会うのが難しかった人びとにリーチできたとしても、それはしばしば年末年始の数日間の支援だけで終わってしまうことがあります。もちろん、それでその人の生活の立て直しに役立つのであれば、それは意義があることと考えています。しかし、結局のところ安定した住まいと収入がないままの生活を余儀なくされる人が次々生み出されている社会構造は変わりませんし、そうした人びとを支える公的な仕組みも整備されないままです。現場での支援に継続して取り組む一方、そこから見えてきたものをどう社会に還元していくのか。年末年始の活動を通じて、改めて考えさせられています。(結城)

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