私は昨年2月に〈もやい〉のスタッフになり、シェルターを担当しています。
この場を借りて、改めてシェルター事業のご説明をするとともに、約1年間の感想を述べてみたいと思います。
将来のことを考えられます
この事業は2020年に始まりました。
住まいのない方がアパートを借りるまでの滞在場所として、「施設」以外の選択肢を増やしたい。
それが出発点でした。社会的なしくみづくりのモデル事業で、
公的な施策としての実現を目指すという位置づけでもあります。
新年度からは4部屋を運営していく予定です。
現在までに40名ほどの方が利用されました。
10〜70代と幅広く、多くの方は広義のホームレス状態でした。
最近の傾向としては若年化が見られます。
これには非正規雇用などの就労の不安定化、家庭環境の問題などが背景にあると思われます。
路上生活や友人宅などで安心してお休みできなかった方からは、
シェルターに入居されて「安心して眠れるのがありがたい」と言う声もあります。
「将来のことをじっくり考えられます」とぽつりとつぶやいた方もいました。
生活保護を希望したくても、施設での集団生活を前提とされるのが苦痛で
申請をためらっていた方もいます。
しかしシェルターに入居することで申請に繋がったケースもあります。
清掃、補充、配送の調整……
シェルターは生活に必要なものをすべてそろえていて、
お身体ひとつですぐに生活がスタートできるようにしています。
入居前と退去後には清掃や備品の補充をしていますが、大変なときもあります。
布団の配送を置き配にしていたのに通常配送になっていて受け取れず、
別日に指定しなおして……と2回繰り返したこともありました。
それでも、いつでも入居できるようにこころがけています。
お部屋の清掃はボランティアさんに助けてもらっています。
気力と体力をチャージする場所
ただ、シェルター数が非常に限られているため、
面談時に「この方にはご利用いただきたいな」と思っても条件が合わず、
叶わないことも多々あるのが現状です。
シェルター入居は原則3カ月間なので、入居が決まった後は、
生活保護申請を皮切りにアパート探しに必要な準備をはじめます。
身分証明書がない方は役所での手続きもしなければならず、想像以上に時間がかかります。
さらに、物件の申し込みには携帯電話が必須なので、
必要な方にはそれに対応してくれる団体をご紹介したりします。
それらが揃うと—ここまでに2カ月ほどかかることもあるのですが—いよいよアパート探しです。
ただ、住宅扶助の範囲内での物件探しは難しいうえに生活保護世帯への偏見もあって、
入居者の方は本当に気力と体力を消耗します。
シェルターはその気力と体力をチャージする場所でもあるのだと感じます。
他の団体からもやいシェルター利用について照会をうけることもあり、
少しでも有効利用できるようにスタッフ間で話し合いながら運営しています。
先日は、以前助成金をいただいていた認定NPO法人抱樸(ほうぼく)から
シェルター運営について取材を受けました。
国土交通省のヒアリングに同席し、意見を述べる機会もありました。
これまでの実績を他の団体と共有しつつ、
将来の居住支援のあり方へと繋げていきたいと考えています。
いま、シェルター運営費用は自主財源のみですので、
皆さまの温かいご支援により事業を継続できていることに心より感謝申し上げます。
今後ともよろしくお願いいたします。(川岸)