認定NPO法人 自立生活サポートセンター・もやい

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もやいブログ

2023.1.13

入居支援事業おもやいオンライン

これは「個人情報保護」なのか〜連帯保証人事業と生活保護〜

「それはケースワーカーの仕事ではありません」

 この夏、アパートの管理会社から、
「〈もやい〉が連帯保証人をしていた方が退去したが、その後の連絡先がわからず、
原状回復にかかった費用の請求ができずに困っている」
との電話がありました。

 詳しく聞くと、次のような状況でした。

 居住者は生活保護を利用されていて、
ケースワーカー(以下、CW)から本人の代理として解約の連絡があった。
退去後の部屋のクリーニングに通常以上の費用が発生する状態で、
敷金で足りなかった分を請求しようとしたが、転居先がわからず、電話も通じない。
CWには「個人情報だから」と一切の情報提供を拒まれた。
そこで困って連帯保証人の〈もやい〉に電話をした、ということでした。

 〈もやい〉も退去を知らなかったため、すぐにCWに確認したところ、
やはり個人情報だから何も教えられない、本人に確認するのも請求書を渡すのも
CWの仕事ではないので断る、それを調べるのはあなた方の仕事だ、という言い分でした。

 上司である係長に相談しようとするも、頑として阻まれました。
最終的には係長と話せましたが、「手続きの不手際はお詫びするが、対応はCWが言った通り」
という回答でした。管
理会社や大家さんの負担を長引かせることも避けたく、
ひとまず〈もやい〉が立て替え払いをしました。

本人抜きに本人のことを決めていいのか

 本人の承諾なく新しい連絡先を教えないのは当然です。
本人が確認のできる状態にないこともあり得るでしょう。
しかし解約手続きを代理で担うことにしながら、それに伴う精算は
「生活保護法で定められた役割ではないから関係ない。本人に確認する義務もない」
というのは理由になるでしょうか。

 東京都の保護課に相談したところ、生活保護法を根拠として
CWに本人との連絡を強制するのは難しい、ただ本人の「自立の助長」という
生活保護法の精神に鑑みればもっと柔軟な対応がとれたとは思う、という回答でした。

 〈もやい〉としては、連帯保証人の責任として原状回復費を支払う用意はあります。
一方で、連帯保証人をお受けするにあたっては契約書を交わしており、
その中には立て替え払いが発生した際、
「その履行した金銭債務の支払いを、〈もやい〉におこなう」
「その費用の支払いが困難な状況に至った場合、ただちに〈もやい〉に連絡する」
「(ご本人と)〈もやい〉は互いに連絡を取り合い協議の上、前項の債務に対処する」
という記載があります。

 生活に困窮した方を支援する団体として、
支払いが難しければ無理に取り立てることはしません。
しかし、ご本人に状況や意思、希望を確認せずに「支援」してしまうのは、
一方的にその方が自立していないと決めつけるも同然です。
しかも今回は、本人が拒絶しているのではなく、
自立を助長する役割を持つはずのCWが阻んでいるのです。

立場の違いを超えて

 役所と〈もやい〉とでは、立場も違えば支援の考え方が違っていても当然です。
ですがCWが関わった事柄に対して、最初からケンカ腰の口調で
話し合いの余地もない態度を取られては、ご本人の利益を大きく損ねる結果になりかねません。
さらには部屋を貸す側に「生活保護を利用している人はリスクが高いから貸すのを控えよう」
という認識を与えかねないのも大きな問題です。
今回のようなことはこの担当者ひとりの問題かもしれませんが、
そのCWが担当している何十人、将来的には何百人という方にとっては
そのひとりがすべてです。
こうした対応を上長も放置しているのであれば、問題はさらに広がります。

 1か月近いやりとりの後、今後のために係長と意見交換の機会を設けていただくことになりました。
その場でも、「役所の対応は間違っていなかった」という主張に終始されていましたが、
ご本人に〈もやい〉からのお手紙を渡すことは約束くださいました。

 読者の皆さんは、今回の件をどう受け止められるでしょうか。(伊藤)

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