去る9月17日、18日にもやい貧困問題基礎講座2022を開催しました。
3年ぶりとなった対面での講座開催となり、20名を超える方にご参加いただきました。
講座の初日はまず、もやい理事長の大西から貧困問題の全体像について講義を行いました。貧困問題は自殺者の多さや大学進学に伴う経済的負担と格差などの、一見異なる社会問題に通底する問題の1つとしてこの社会に広く、根深く存在しています。また、すぐにでも生活保護制度が必要な層だけではなく、公的支援と労働市場を行き来する人びとや、常に低所得で生活の不安を抱えながら生活している人びとが相当のボリュームをもってこの社会で生きており、コロナ禍はそうした異なる層にまたがって深刻な影響を及ぼしていることが現場の活動から浮き彫りになってきました。
初日は2人のゲストをお呼びして、貧困問題と重なりあう形で存在している、労働問題と女性への暴力についてお話いただきました。
首都圏青年ユニオンの原田さんからは、コロナ禍以前から続くワーキングプアの増大と最低賃金の低下、労働現場における劣悪な労働環境の問題についてお話があったほか、コロナ禍では非正規雇用の中でもとりわけシフト労働者が企業にとって都合の良い「コスト調整」のために利用され、不利益を被っていることなどが報告されました。
NPO法人女性ネットSaya-Sayaの松本さんからは、ジェンダーに基づく暴力(Gender Based Violence, GBV)の根深さ、被害からの回復の困難、被害者を孤立させない支援のネットワークの必要性について、ご自身の支援の実例に基づいてお話いただきました。
講座の2日目には現在内閣官房主導で進んでいる孤独・孤立対策の実相や、生活保護制度の概要と問題点など、人びとの生活を支えるための制度について、〈もやい〉の大西と結城からお話をしました。
普段ニュースでなんとなく耳にする言葉や制度でも、制度や政策が実際にどのように進められ、運用されているのか知ることは容易ではありません。今回の講座では政策のより深い部分についてもみなさんに知っていただけたのではないかと思います。
貧困問題基礎講座は、貧困や関連するさまざまな社会問題の第一線で得られた知見を多くの方に伝え、少しでも社会問題の解決に向けたアクターを増やしていくことを目的としています。
来年も開催したいと考えておりますので、今回ご参加いただけなかった方にも、ぜひ次回以降お越しいただければ幸いです。