「おもやい通信」第78号(2021年春号)で、コロナ禍以降のメディア掲載に関してご報告させていただきました。今回は、その後の取材・講演依頼などの状況や、情報発信に対する〈もやい〉の思いなどをお伝えしたいと思います。
メディアによる発信
2021年の1年間の取材申込等の状況をみると、〈もやい〉ホームページの講演・取材申込フォームに依頼があったものだけでも約150件で、2020年とほぼ同水準でした。フォーム経由でない依頼も含めれば、さらに数は増えます。コロナ前の2019年が50件程度であったことを考えると、この2年間の依頼の多さが際立ちます。
取材依頼のうち、26%がテレビ局、15%が新聞社・通信社で、2021年の特徴としてはテレビ局からの取材依頼が多かったということがいえます。実際にテレビニュースなどで、〈もやい〉が都庁下で行っている相談会の様子をご覧になった方も多いのではないかと思います。
1度だけの取材ではなく継続的に現場に足を運び、ていねいな取材をしてくださっている記者がいることは、〈もやい〉にとって心強いことです。他方、現場の風景と当事者のインタビューを映像に撮ってその日のニュースに使うことだけで頭がいっぱいで、当事者や支援者双方にまったく配慮のない取材を行おうとする記者もいます。そのような場合に、都度私たちの思いを説明し理解していいただくというのは、非常に手間と根気のいることです。
困窮者支援の現場がマスコミによって「消費される」ような状況は避けなくてはいけませんが、メディアの力は大きく、メディアの発信によって貧困の現状を知り、〈もやい〉を応援してくださったり、社会に対し声を上げたりしてくださる方がいることを思えば、私たちがいかにメディアを効果的に「利用」して〈もやい〉の発信力を高めていけるか、今後の課題だと考えています。
1月には、地方新聞46紙と共同通信社が選ぶ「地域再生大賞」の優秀賞に〈もやい〉が選ばれるというニュースがありました。活動が評価されるというのはありがたいことではありますが、私たちがメディアに期待したいのは、〈もやい〉の活動が評価され必要とされてしまう社会に対し疑問を持ち、社会や国を変えるためにメディアの力を使ってほしいということです。
学生からの依頼の増加
2021年中にあった学生からの取材依頼の件数は、約30件に上りました。これも例年よりかなり多い数字です。数年前までは、「貧困」をテーマに調査をしたり卒業論文を書くという学生が〈もやい〉に来ることはそれほど多くありませんでしたが、いまや学生にとって「貧困」が身近なトピックになってきているということを、私たちも肌で感じています。
また、以前は「生活保護は不正受給が多い」とか「ホームレス生活をしている人は好きでやっている」といった誤解や偏見を持った状態で〈もやい〉に話を聞きにくる学生がいましたが、最近では、生活保護が利用できる人が利用できていないことに問題意識を持っていたり、路上生活にいたる多様で複雑な背景について知識や想像力を持った状態で来る学生が増えている印象を受けます。
そして、ご自身の将来に不安を感じ、貧困は他人事ではないと考え、切実な様子で話に聞き入る学生も少なくありません。多くの学生さんに貧困問題を知り、考えていただけることは嬉しいことではありますが、学生のうちから将来の貧困を心配しなければならない社会を早く変えなくてはいけないという焦りも感じてしまいます。
私自身は、これからの社会を担う若い世代に貧困問題を伝えていくという仕事には大変やりがいを感じています。話を聞いてみたいという学生さんがいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。(加藤)