〈もやい〉20周年活動報告会を開催しました
先日、9月26日に〈もやい〉20周年活動報告会〜〈もやい〉20年の歩みと貧困問題のこれから〜をオンラインにて開催いたしました。活動報告会では設立以来の歩みや、コロナ禍という波乱に満ちた2020年度を振り返るとともに、今後の貧困問題の行く末をゲストとともにディスカッションしました。ゲストにはフォトジャーナリストの安田菜津紀さん、ライター・編集者である望月優大さんをお招きし、コロナ禍のなかで顕わになってきた日本の貧困問題について、またそれをどのように発信していくのかなどの点をお話いただきました。
〈もやい〉は「貧困問題を社会的に解決する」ことを団体のミッションとしています。
「社会的に」という言葉には、社会制度や社会構造そのものを変えていくという意味に加えて、自分たちだけではなく、多くの人を巻き込んでそうした変化を引き起こしていくという意味があります。
この点で、コロナ禍での貧困問題をどのように発信していくのかというのは重要な問題だと思います。
現在コロナ禍と関連して様々な社会問題がメディアで取り上げられています。
貧困問題が取り上げられることもありますが、一時期に比べてその頻度は減っていると思います。
また、これまでとは異なって見える傾向—例えば女性の非正規労働者への影響が大きいなど—が強調されているように思います。
もちろん、コロナ禍での貧困の特徴を明らかにすることは重要です。
しかし、一方でそうした特徴の背景にあるのは、この30~40年前から続いている非正規雇用の増加と、それがとりわけ女性に多くなっている構造的な問題です。これらはコロナ禍以前からあるものであり、何もしなければコロナ禍が収まったあとも変わらないと思います。
そうならないように、「コロナ禍」というキャッチーなフレーズに惑わされずに丁寧にこの社会の姿を描いていくことが求められます。
貧困問題基礎講座2021
そうした取り組みの一環として、もやいでは今年度も貧困問題基礎講座を10月~11月に開催しました。昨年度はコロナ禍のために開催を見送りましたが、今年はオンラインでの開催となっており、有料講座でありながらも、30名を超える方にご参加いただきました。今回の講座では貧困問題ともかかわりが深い分野の専門家にゲスト講師としてご参加いただきました。具体的には非正規雇用の労働問題(首都圏青年ユニオン 原田仁希さん)、外国人の権利(移住連 稲葉奈々子さん)、自殺対策(ライフリンク 根岸親さん)、妊娠葛藤(ピッコラーレ 中島かおりさん)の各分野と貧困の関わりについてお話いただきました。これらのいずれも、ここ数年で始まったものではなく、数十年、ときにはそれ以上の長い年月の蓄積の上にある問題です。この講座の受講者はマスメディアで届けられる人数とは比べるまでもなく少ないですが、受講された方がこれらの社会に根を張った問題に関心をもち、周りに広めることでこうした問題を解決していくための種を撒くことができたらよいなと思っております。
COMPASSプロジェクトについて
多くの市民に貧困問題について知ってもらうこと、自分事として考えてもらうことが重要な一方で、やはり現在困っている人に必要な支援・情報を届けることももやいの欠かせない活動です。
昨年度から進めているCOMPASSプロジェクトもいよいよ大詰めを迎えており、つい先日正式なロゴが完成いたしました。
前回の「おもやい通信」でも書かせていただきましたが、COMPASSプロジェクトの内容について簡単に説明すると、自分に合う支援制度を探す手助けをする「支援検索ナビ」、生活保護の申請書をオンラインで作成しプリントアウトできる「生活保護申請書作成支援システム PASS」、そしてもやいHPのチャットシステムをまとめてCOMPASSプロジェクトとしています。
〈もやい〉はつながりの貧困を解消すべく、さまざまな事業をしてきましたが、一方で、〈もやい〉に直接お越しになれない方に対してできることには限りがあります。そこで、〈もやい〉と直接つながることができなくとも、自分で自分の進む道を探すための「羅針盤=Compass」となるように、どこからでも利用できるこれらのオンラインシステムを作成しました。
ただ、まだ知名度も低く、システムにも改善の余地があると思います。ぜひ読者のみなさまにはこうしたシステムがあることを周囲の人に伝えていただくと同時に、改善すべき点がありましたら教えていただけますと幸いです。(結城)