2021年もあと1か月ほどとなりました。東京も一日一日と寒さが厳しくなっています。
〈もやい〉のコロナ禍での緊急対応も、すでに始めて1年半以上、そして、もうすぐ2年となります。
昨年冬の「おもやい通信」にて、経済の回復に向けた見通しが不透明、先が見えない、と書きましたが、現在もそれは変わりません。
感染者数は今秋に減少に転じていますが、まだまだ、楽観視できる状況ではないでしょう。
〈もやい〉の緊急支援の一環として2020年4月から新宿ごはんプラスと合同でスタートした毎週土曜日の新宿都庁下での食料品配布&相談会は、80回以上の実施回数を数えます。
そして、すでに、2021年11月時点で、のべで20,000人以上の方に食料品のセットを配布しています。
当初は約100人だった食料品配布を待つ人の列は、いまや400人近くになることもあります。
この数字だけでも、コロナ禍でのこの問題の深刻さを如実に物語っていると言っていいでしょう。
コロナ禍が長引くなか、苦しい状況におかれている方はむしろ増加していると考えることができます。
コロナ禍での〈もやい〉
「おもやい通信」でこれまでご報告はさせていただいていますが、土曜日の都庁下の活動のみならず、平日の相談活動についても面談・電話・メールなど、ツールはそれぞれですが、例年の1.5倍から2倍以上の相談件数となっているものもあります。
非正規で働く人の状況、女性や若者など、厳しい環境に追い込まれている人が社会の中にたくさんうまれてしまっていることは、あらためて言うまでもないことだと思いますが、日々、そういった声なき声に向き合い、支援を届けています。
入居支援、住まい結びともに、例年よりも対応件数は多くなっています。
生活相談を通じて、住まいがない方が公的支援につながり、〈もやい〉で保証人や緊急連絡先をお引き受けし、アパート生活に移行したり、住まい探しによってアパート契約にいたる方もいます。
各事業の「つながり」という意味では、結果的にではありますが、コロナ禍でより密に、お一人お一人の状況に応じて支援をおこなっていくことができていると思います。
交流事業は、毎週おこなっていたサロンをはじめ、「みんなでわいわい」といった活動がコロナ禍ではおこないにくいこともあり、事業の実施に制限がかかった状態が続いています。
コーヒー焙煎や葬送支援については、感染予防をおこないつつも取り組んでいますが、例年に比べてその規模は決して大きくありません。
藤沢市とNPO法人農スクールとの共同事業として始まった「もやい畑」については、屋外の活動ということもあり、地域の方とも協力しながら実践を重ねています。
新たな試みと今後の展開
コロナ禍でスタートさせた「もやいアパート型シェルター」は、部屋数の限界はありつつも、生活相談につながった方で必要な方の一時的な住まいとして、大きな役割を果たしています。入居した方は、この1年間で約20人。女性や若者の利用が多いのが特徴です。
既存の公的支援のルートでは複数人部屋の施設などに入居することを求められ、しんどい思いをすることがまだまだ多いという問題があり、それがあらためて浮き彫りになった形です。アパート型のシェルターの重要性は、〈もやい〉としても積極的に提起していこうと考えています。
5ページでも紹介していますが、今年の5月末から「支援検索ナビ」「生活保護申請書作成システム(PASS)」といった、オンライン上での支援ツール「COMPASS」をスタートしました。また、有人・無人でのチャット相談も〈もやい〉HP上で始めています。
〈もやい〉としても、こういったデジタルツールを活用することは大きなチャレンジでしたが、試行錯誤しながら取り組んでいます。
面談での相談、同行支援に、物件の内見、交流など、対面でしかできない支援は、〈もやい〉の大きな特徴ではありますが、相談者の「メニュー」を増やしていくために、新たな試みは積極的に続けていきたいと思っていますし、常に当事者のニーズにあった支援とは何か、必要な支援をどう届けていくことができるのかを念頭に、〈もやい〉がやるべきことを実践していきたいと思います。
公助の拡大を求めて
10月末に総選挙が終わり、岸田政権の続投が決まりました。選挙中に活発に議論されていた「10万円の給付金」は、報道を見る限りではその対象をどんどんと縮小し、所得制限をつけたり、住民税非課税世帯水準以下にするなど、限定的なものとなる見込みです(2021年11月17日時点)。
岸田総理が掲げる「成長と分配の好循環」の「分配」にどのような施策が含まれているのかはいまだ明らかになっているとは言えないでしょう。
たとえば、政府の「特例貸付」は厚労省によると、のべで280万人が利用し、その貸付総額は1兆2000億円にものぼるといわれています。公的な「借金」が前代未聞の規模で拡大していることに多くの支援現場は危機感を感じています。
安倍政権、菅政権と、低所得者への支援に積極的であったとは思いません。
岸田政権がどのような支援施策をおこなっていくのか注視しながら、また、現場の視点から発信・提起していくことが求められていると思います。
〈もやい〉としても、引き続き、政策提言活動には力を入れていきます。
孤独・孤立対策政策参与として
以前の「おもやい通信」でもご報告させてもらいましたが、今年の6月より、内閣官房孤独・孤立対策室の政策参与の任を受け、〈もやい〉の現場と並行して、政府の「孤独・孤立対策」をすすめるべく尽力しています。
今年の2月にイギリスに続いて世界で2番目に大臣が置かれた孤独・孤立対策ですが、まだまだ政策的なパッケージを作っている途中です。NPO等と政府の対話の機会を作ったり、プラットフォームの形成支援など、官民の連携のための足場づくりをしています。
現在、孤独・孤立の実態調査(年度内には結果を公表)、年内には重点計画の策定、というスケジュールで動いています。
政策決定の場にコミットすることの意義と課題、限界を感じつつの日々ですが、現場の視点から少しでも政策実現につながるべく、引き続き、取り組んでいきます。
年末年始、そして、2022年が始まります
〈もやい〉では、年末年始も、支援活動をおこなっていきます。
コロナ禍での緊急対応も継続して実施していくべく、準備をしているところです。なかなか先が見えない状況ではありますが、一人でも多くの方に支援を届けていくことができるよう、〈もやい〉一同、全力で邁進してまいります。
〈もやい〉の活動にご注目いただけますと励みになります。
〈もやい〉の活動は、みなさま一人ひとりの方のご寄附で成り立っています。
毎回のお願いになり大変恐縮ですが、今後ともに、ご支援、ご協力を賜りますよう、よろしくお願いいたします。(大西)