生活相談・支援事業担当の結城です。コロナ禍の下での臨時相談体制に移行してから1年が経過し、もはや「臨時」ではなくなってきました。まだまだ収束のメドはたっておらず、この長期戦は続きそうですが、この節目にふりかえり&報告をしたいと思います。
2020年度の〈もやい〉の来所面談には1,329件の相談が寄せられました。土曜日の相談活動を開始したとはいえ、例年の1.5倍程度の数字となっています。以下にお示しするのは〈もやい〉に相談に来られた人の内、個人情報を匿名化した上で政策提言等に利用しても構わないという同意をいただいた503名の人を対象に、基本的な属性等を集計した結果です。これらを見ながらこの1年間をふりかえってみたいと思います。
基本属性(性別、年齢、相談履歴)
表1は相談者の性別を表にしたものです。2割程度が女性となっており、 例年より割合は少なくなっています。これは部分的には都庁前での相談会が屋外での実施のため、女性の人が相談しづらいと感じたためではないかと思います。また、あくまでも相談に来た人の割合であり、女性が影響を受けていないということを意味していません。とりわけ、DVなどの暴力被害を受けていたり、家の中でさまざまな抑圧を感じている人は表面化しづらく、コロナ禍の影響を受けている女性は潜在的には多くいると考えられます。
図1は相談者の年齢層(10歳ごと)をグラフにしたものです。やはり例年通り30〜50代が多く、きれいな山なりを描いていますが、やや若年層が多いのが昨年度の特徴です。60代以下では全般的に失職/減収して困っている人が多いですが、若年層ではこれに加えてパートナー関係の破綻や家族との関係の悪化など、人間関係の問題が生活に多大な影響を及ぼしているケースが目立ちます。
表2は2020年度になって初めて〈もやい〉に相談に来た(新規)のか、それ以前にも〈もやい〉に来たことがあるのか(継続)を分けて集計したものです。これを見ると圧倒的に多くの人が初めて〈もやい〉につながっており、支援団体に相談したこと自体が初めてという人がほとんどです。この1年間、〈もやい〉が生活に困った人にリーチすることができてきたという点では団体としての重要な役割を果たせているのではないかと考えています。
公的制度の利用 〜依然として残る課題〜
〈もやい〉の相談活動では生活保護制度を中心とした公的制度を利用者のニーズに合わせて適切にかつスムーズに利用できるようサポートすることが大きなウエイトを占めています。表3は〈もやい〉に相談に来た時点で何らかの制度を利用していたかどうか、また〈もやい〉に相談後公的制度の利用をしたかどうかという2つの軸で作成したクロス表です。「現在の公的支援」が「なし」という人が262名おり、そのうち「生活保護」もしくは「自立支援事業」の申請をした人が138名で半数を超えています。なお、相談時点で生活保護制度を使っていて、かつ生活保護の申請をしたというのは、一度廃止になってから再度申請をしたというケースです。そのほかに、ケース数は少ないですが、相談時点で「その他」の支援制度(貸付など)を利用していて、生活保護制度の利用に切り替えた人もいます。
制度の申請をしなかった人の中には、まだ申請をするタイミングではない(貯金がある)、ひとまず情報収集のため相談に来たという人も含まれていますが、やはり依然として制度の利用に抵抗があるという人がいます。本人の判断を尊重するのが大前提ではありますが、やはり制度に対する負のイメージや、扶養照会(親族への連絡)がされる可能性があることにより利用をためらっている人がいることを考えると、相談者本人ではなく制度やそれに対する社会の見方を変えていくことが大切なことを改めて実感します。
今後について
以上、簡単にこの1年間をふりかえってきました。初めて相談に来た人の中にはそれまで安定した生活を送っていた人もいた一方で、もともと不安定な住まい・仕事の条件のなかでサバイブしてきた人も大勢います。そもそも望まずにそうした条件のなかで生活している人がいるという社会的な構造はコロナ禍以前からあり、また仮にワクチンが普及して感染が収まったからといってなくなるものではありません。コロナ禍のなかでの貧困が決して例外的な出来事ではないこと、これまでの私たちが住んでいる社会のあり方と連続したものであると考えることが大切だと思います。〈もやい〉としても引き続きこうした発信を続け、「コロナ以後」の社会を「コロナ以前」よりもより良いものにしていきたいと考えています。
また、ここでお示ししたデータはほんの一部で、属性ごとのクロス集計もまだ済んでいません。引き続きデータの分析を進めて、具体的な問題提起や提言へとつなげていきたいです。(結城)