前号(2020年冬号)でもご案内のとおり、〈もやい〉ではコロナ禍のもと
住まいを失う方が増えたことを背景に、昨年9月、シェルター事業を開始しました。
当初はコロナの影響で空室を抱えたマンスリーマンション業者との
連携事業としてスタートしましたが、この事業が最終的に
「(劣悪な)施設に入ることなくアパート探し」というスタイルが
フツーになることをめざしているため、
年明けからは一般のアパートを借りてのシェルター運営もスタートさせました。
候補物件探しでは、まず3年間にわたる“住まい結び(不動産仲介)”で
接点のあった業者さんに声掛け。その多くは生活保護への理解ある業者さん、
大家さんなのですが、シェルターの性質上、利用者が頻繁に入れ替わることが前提。
他の入居者さんに不安を与えるなどの懸念も示され、
予想以上に苦戦したものの、何とか予定通りの室数が整い、運用を始めています。
シェルターQ&A
— 部屋にはどんな設備があるのですか?
冷蔵庫・洗濯機・電子レンジといった家具家電や
布団・調理器具・食器・洗濯用品等の生活用具を備えています。
リサイクルショップも活用し、その後のアパート生活に近い設備・備品を準備しています。
トイレットペーパーやごみ袋といった消耗品は、原則ご本人に購入していただきます。
— どういう契約を結ぶのですか?
〈もやい〉・物件オーナー間は賃貸借契約を結び、利用者の入退去の際には
その概要をオーナーに報告する旨の特約が付いています。
〈もやい〉・利用者間ではシェルターの利用契約を結び、
光熱水費も含めた利用料(家賃+1万円前後)を保護費から負担いただきます。
— 利用者としてはどんな方を想定しているのですか?
アパート契約では保証会社の利用が近年一般的ですが、
審査には「写真付の身分証明書」を求められるケースが大半です。
具体的には運転免許証やパスポート、マイナンバーカード等の提出が必要ですが、
既に失効していたり、窃取されたりという方が少なくありません。
前二者はお金もかかるため、アパート探しに先んじて
「シェルターに入居して住民票を移す⇒マイナンバーカードを作る」という前段が
必要となる方が実は多くおられます。
— 入ったシェルターにずっと住むわけではないのですね?
シェルターは日本語にすると「避難所」。恒常的に住む場所ではなく、
一定期間(3か月前後を想定)経過後に退去するのが基本です。
4年目を迎える「住まい結び事業」の知見を活かしてアパート探しもサポートし、
少しでも早く落ち着いた環境に、と考えています。
もちろん、ご本人の属性やエリアによって、
その後のアパート探しの難しさにも差があるため、柔軟に対応していくことになります。
— シェルター事業の原資はどうなっているのですか?
大きく3つに分かれます。
まず、①READYFORによる休眠預金を活用した「新型コロナウイルス対応緊急支援助成」、
②認定NPO法人抱撲による「総合支援付居住支援助成」の2つの助成金を活用しています。
これら助成金に〈もやい〉が直接多くのみなさまからいただいた
「寄附金」を合わせることで事業を進めていきます。
— ニーズは多くあると思いますが、今後もシェルターの数は増やす方向ですか?
今後の状況次第ではありますが、シェルターを実際に運営することで得られる“気づき”を
今後の政策提言に生かしていくことが〈もやい〉の本来果たすべき役割。
〈もやい〉がシェルター運営をしないで済む社会を早く実現する、そこを目指すことになります。
コロナ禍がいつ終息するのか、またその後はどんな社会になるのか、
まさに先行き不透明な状況下で事業を進めることとなります。
しかしながら、この「禍」をただ嘆くのではなく、これを機と捉え、
これまで遅々として進まなかった「施設ありきのしくみ」という課題に
新たな解決の道を切り拓く。そんな風にポジティブに捉えつつ、
取り組みを進めていきたいと思います。
引き続き一人でも多くのみなさまのお支えをお願いいたします。(土田)