生活相談・支援事業担当の結城です。
新型コロナウイルスの感染拡大が明らかになってから早くも1年が経過しました。
今だに終息のめどはたっていませんが、昨年4月から12月末までの相談状況について
ご報告するとともに、その中から見えてきた問題点について以下、記したいと思います。
臨時相談体制下で相談件数は例年の1.5倍前後
〈もやい〉では4月より、通常の火曜日の相談会に加えて、
土曜日の都庁前でも相談活動を行ってきました。
路上での相談という、火曜日とはまた勝手が違うなかでの活動でしたが、
参加者みんなで協力し、工夫を重ねながら現在まで臨時の体制を続けています。
表1は2020年の4月から12月末までの相談件数をまとめたものです。
例年、面談での相談件数は700~800件程度となっていますが、
今年度はこのままのペースでは1200件に達し、例年の1.5倍となります。
また、電話での相談も面談ほどではありませんが例年よりも多くなっています。
都庁前での食料支援については、協同団体の新宿ごはんプラスの例年の実績と比べて、
約3~4倍の方が訪れています。
相談の特徴
相談者のうち、匿名化した上での相談データの利用の許諾を受けた360名についてみると、
年齢や性別については、やや若い傾向がある以外は例年と大きな違いはありません。
ただし、〈もやい〉に初めて相談に来たという方が
8割以上を占めており、
行政や民間団体への相談自体がはじめてという方も多くいらっしゃいました。
必ずしも相談者全員がコロナ禍の影響をわかりやすい形で受けていたわけではありませんが、
やはりイベント、観光、飲食関係の仕事を失って困っているという方が多く相談に訪れています。
また、生活福祉資金貸付や住居確保給付金(家賃扶助)といった仕組みでは
3月から特例措置が取られており、こうした制度を利用されている方も
例年と比較にならないほど多くなっています。
これらの制度を利用して生活再建ができた方もいますが、
一方で先行きが見えず不安を募らせている人もいます。
これらの制度を使いやすくすることは大切な一方、
生活保護制度はいまだに使いづらく(扶養照会、自動車の保有がネックになるなど)、
公的な支援の仕組みには依然として課題があります。
また、新型コロナウイルスの影響は経済的なものにとどまりません。
東京都では4月の緊急事態宣言の折に「ステイ・ホーム」、
つまり家にとどまるようにと呼びかけがなされましたが、
DVや虐待を受けているなど、そもそも家が安全ではない人びとは、
たとえ世帯単位では経済的に困窮していなくとも、
家以外の居場所を失いさらに追い詰められてしまうという問題があります。
経済的な支援だけではなく、さまざまな境遇に置かれている人びとの生活を支える支援が必要です。
ただし、これらの出来事の背景には、コロナ禍以前からあるさまざまな社会問題があります。
非正規労働者を景気の調整弁とする労働市場、ジェンダーに基づく暴力の構造のほか、
ここでは言及できませんでしたが外国人やその他のマイノリティの社会福祉制度からの排除は
コロナ禍以前からある問題です。仮にコロナ禍が収束したとしても、
こうした問題点が解決するわけではありません。
コロナ禍を私たちの住む社会を見直すきっかけとして、
その先を見据えた活動を今後していきたいと考えています(結城)。