住まい結びではコロナ情勢下における3密を避ける狙いで、
6月~10月までの期間オンラインフォームによる相談受付を行っておりました。
この間に寄せられた相談件数は延べ120件で、会社寮・友人宅・ネットカフェなど
自己名義の住まいを持たない方が、仕事とともに
住まいを失ってしまうといったケースが少なくありませんでした。
他方、自己名義の賃貸住宅に住む層についても、
住居確保給付金の決定件数が4月~8月までの4か月間で
前年度の21倍にあたる8万9千件にのぼるとの厚生労働省の発表があり、
公的制度の利用によってギリギリのところで住まいを繋いでいる方々の多さに
予断を許さない状況となっています。
こうした中で、住まいにかかる事業者や行政の対応にも一部変化が見られました。
事業者側の変化
生活保護利用者の方の物件探しでは、
大家側の元付事業者に対し生活保護に至った背景の説明が求められます。
これについては、相談者の方の承諾のもと〈もやい〉から伝えることになりますが、
「コロナ禍による失職」というケースではその他のケースに比べ
オーナーや元付事業者の許容度が高くなります。
一口に「コロナ禍による失職」と言ってもそこに至るまでの背景は様々ですが、
コロナと言えば誰もが「他人事ではない」「やむを得ない事情と理解できる」ことが、
理由の一つとしてあると考えられます。
昨今のコロナ情勢下において、貧困問題に対する社会的関心の高まりを感じますが、
コロナとそれ以外のケースとの間に線を引くのではなく、
むしろコロナを契機として、様々な事情で困窮する方々へ想像力を向けてほしいと思います。
行政側の変化
都内A区はもともと生活保護での物件探しが難しいエリアでしたが、
生活保護利用者の増加に伴い住宅扶助価格帯の住宅供給が逼迫。
行政区をまたいでの転宅(=移管)が認められるケースが増えています。
従前は就職や通院等の特別な事情がなくては認められず、
またいったんは認められても自治体間の手続きが滞り生活保護利用者が
不利益を被るケースも少なくありませんでした。
〈もやい〉のシェルター事業についても、
現状ではシェルターのある区で保護申請を行う方のみに
入所者を限定せざるを得ないのですが、
もし今後さらに移管制度の柔軟な運用が認められれば、
より開かれた形でシェルターを提供することが可能となります。
もう一点は、住まいを失った状態で生活保護に繋がった場合は
施設やシェルター等を仮の住まいとすることになりますが、
そこからのアパート転宅許可についてもコロナ感染防止等の観点から
早期化の傾向にあるということです。
従前にはよく見られた、理不尽に施設に留め置かれるケースは
限定的ではあるにせよ減りつつある状況です。
いずれも環境要因による一部の行政区の一時的な措置という印象ではありますが、
生活保護利用者の権利擁護の面からも、ここから柔軟かつ合理的な制度運用の実現に向けた
一つの道筋をつけるべく、行政へ働きかけていくことができればと思います。
おわりに
シェルター事業の本格始動に伴い、住まい結びも新たな局面を迎えることになります。
てんてこ舞いの毎日ですが、2年間の蓄積をもとに、
手探りながらも一歩一歩進んでいきたいと思います。
今後ともみなさまのご支援、ご協力のほどをお願い申し上げます。(東)