2014年から始まった〈もやい〉の貧困問題講座の第6弾となる「これだけは知っておきたい!貧困問題基礎講座2019~家族・暴力と貧困~」が先日都内で開催されました。土日にわたる長丁場の講座でしたが、30名弱の方に当日ご参加いただきました。当日の様子を写真とともにご報告します!
9月14日(土)
司会の加藤から冒頭のあいさつをさせていただき、アイスブレイクを挟んでからいよいよ講座が開始します。
理事長の大西から「貧困とは」というタイトルで日本の貧困問題全般についてお話をさせていただきました。
膨大な資料とともに相対的貧困率からはじまり、子どもの貧困、女性の貧困の実態や、貧困の世代間再生産の問題が語られます。また、今年の講座では、国連が中心となって掲げている持続可能な開発目標(SDGs)と絡めて、国内の貧困問題に対するこれまでの対策について検討していきました。
続いて、〈もやい〉の結城から、「生活困窮者を支える制度」について1時間ほど話をさせていただきました。日本の社会保障制度、とくに生活保護制度の現状と課題、そして近年の社会保障制度改革の問題点がテーマでした。
初日の最後は弁護士の山下敏雅さんより、「子どもの貧困と法的支援」についてのご講演です。具体的なケースを引き合いに、実際に子どもの貧困や虐待が起きているとき、弁護士がどのようにして子どもたちと関わり、支援を行っているのかとてもわかりやすくご説明いただきました。
参加者のみなさまには、こうした問題が起きたとき、弁護士に相談するということを1つの選択肢として持ってほしい、というメッセージを最後にいただきました。
9月15日(日)
2日目は冒頭から本講座のテーマの一環である「家族」についてのグループワークに入ります。例えば「子どもの高等教育進学費用の負担」など、さまざまな事柄について家族がその役割を担うべきなのかいなか、参加者自身の考えだけでなく、世間的にはどう考えられているのだろうか、という点についてもグループ内で議論しました。
さまざまなバックグラウンドをもつ参加者同士の交流のなかで、自分の考え、そして他者の考えについて知るよいきっかけになったのであれば幸いです。
家族の役割についてのグループワークに続くのは、元生活保護利用者で現在は支援活動に携わっておられる和久井みちるさんによる「DV被害と生活保護」というテーマの講演です。ご自身の経験をもとに、果たしてDVとは何なのか、DVと貧困とはどうつながっているのかをお話しいただきました。参加された方の中には「自分が考えていたDVはとても狭いものだったと気づいた」という声も聞かれました。
ゲストスピーカーによる講演の最後では、生活保護ケースワーカーの横田さん、そして依存症回復当事者の青木知明さん(川崎マック)、ロクさん(GAメンバー)、小宮勤さん(渋谷ダルク)から依存症と生活困窮について、またそこからの回復の実践についてお話しいただきました。20分ずつという限られた時間の中でしたが、各々の生い立ちから依存症になっていき、そして回復に向けて動き出すまでをときにユーモアを交えてお話しいただき、フロアからもたくさんの質問を寄せていただきました。
2つ目のグループワークでは、「貧困問題を伝えるには」というテーマで、例えば「DVがあったって言うけど、そんな男と結婚したその人が悪いんじゃないの?」とか「お酒をやめられないのは意志が弱いから。そんな人は、放っとけばいいんじゃない?」と言う人がいたときに、どのように応答するのかを考え、意見交換していただきました。こうした時に応答することの難しさと、一方で日々の生活の中での細かい対話の積み重ねが社会を変えていくための一歩であることを感じた、とおっしゃる方もいらっしゃいました。
2日目の最後には〈もやい〉の事業について事務局長の加藤から説明がありました。〈もやい〉では随時ボランティアとしてかかわってくださる方を募集しています。気になるという方はぜひこちらをご覧ください。
アンケートより
最後に、当日ご参加いただいたみなさまにご回答いただいたアンケートから、一部ご感想を抜粋してご紹介させていただきます。
・理論的なところと実体験がいい感じでバランスがとれていました。最後のグループワークにあった問いも考えを深めるいいきっかけになったと思います。
・とても深く濃い学びのできた2日間でした。”貧困”をなくすという大きなテーマでしたが、偉ぶることなくどの方もフラットなお話しぶりで、たくさんの情報をわかりやすく届けてもらえた感じです。当事者のお話からは、知らなかった世界を学ぶことができました。ひとことでは言えない…ありがとうございました。
・グループワークがあって良かったです。いろんな方の考え方を知ることができ、自分を見つめる機会がもてました。
一方で、資料のデザインについてのご要望や、情報量が多すぎて大変だったなどのご意見も頂戴いたしました。これらの意見についても参考にさせていただき、来年度以降、よりよい講座を開催したいと考えております。
ご参加いただいた皆様、講師の皆様、そして共催としてご協力いただいたパルシステム東京様、ありがとうございました。