生活保護の実施要綱などが改定されました
毎年のことではあるのですが、今年も生活保護の実施要領等の改訂がおこなわれました。
2019年度から変わったことは細かくはいくつかあるのですが、ここでは2点紹介したいと思います。
フードバンクも
収入認定されていたが…
1つ目は、子ども食堂やフードバンクを利用した場合に、これまで自治体によっては「収入認定」されてしまっていた問題。
収入認定される運用によって、こういった食糧支援等の支援を利用できない人がたくさんいました。
それを、「原則として収入認定しなくていい」と改訂されました。これは、現場の実態に即した改訂だと思います。
問8-36-2〔子ども食堂やフードバンクを利用した場合の取扱い〕
社会事業団体その他が運営する子ども食堂において食事の提供を受けた場合やフードバンクから食料の提供を受けた場合、
収入認定はどのように取り扱ったらよいか。
(答)子ども食堂やフードバンクの取組の趣旨に鑑み、原則、収入として認定しないこととして差し支えない。
なお、保護費を生活保護の趣旨目的に反する用途に使用することで、過度にフードバンクを利用するなど、
家計管理が困難な世帯については、適切に家計の管理を行うよう助言指導をされたい。
セクシュアルマイノリティの人への対応
2つ目は、少し細かいですが、医療券の「男・女」欄について。
セクシュアルマイノリティの人への対応として、今回、性別の表記方法について、
各自治体で「男・女」欄ではない形にしてもかまわない、という改訂がありました。
医療券の作成(7)「男・女」欄は、該当する文字を○で囲むこと。
なお、被保護者本人から戸籍上の性別を記載してほしくない旨の申し出があり、
やむを得ない理由があると保護の実施機関が判断した場合は、欄外又は裏面を含む医療券全体として、
戸籍上の性別が指定医療機関で容易に確認できるよう配慮すれば、性別の表記方法を工夫しても差し支えない。
〈もやい〉の要望も一部実現
でも、まだまだ課題が
実は、この2点はいずれも、2018年6月に〈もやい〉で
おこなった「生活保護制度の改善および適正な実施に関する要望」のなかの
「7-2.仕送り、贈与等による収入の認定について」と
「16.性的少数者への適切な対応について」において、要望項目として載せているものでした。
生活保護制度についての課題や運用の改善を求める要望書
「生活保護制度の改善および適正な実施に関する要望」を厚労省へ提出しました
https://www.npomoyai.or.jp/20180 607/4569
2点ともに、私たちの提言を契機として改訂されたものであるかはわかりませんが、
少なくとも、要望内容が実現したことは評価できると思っています。
一方で、私たちの要望内容は16の項目、45の点に及んでおり、
まだまだ、生活保護の運用において変えなければならないものもたくさんあります。
特に、現在進行形で起きている生活保護基準(生活扶助基準)の引き下げや、
車の保有の問題など、生活に直接影響を与えるものも多くあり、
〈もやい〉では2019年も再度、政府に対して生活保護制度についての課題や
運用の改善を求める要望をしていく予定でいます。
10連休にともない「要望」をおこないました
また、新天皇の即位にともなう10連休にあたって、連休中に「閉庁」となり、
生活保護制度や生活困窮者自立支援事業などの窓口が閉まって、
支援が利用できなくなってしまうことに対して、その是正を求める要望をおこないました。
「新天皇即位にともなう10連休中の生活困窮者施策についての要望」
https://www.npomoyai.or.jp/ 20190416/5487
私たちが求めた要望内容は以下になります。
1.
新天皇即位にともなう10連休の閉庁期間中に、各自治体に生活保護申請を受け付ける窓口を設け、
申請権を侵害することなく適切な対応をおこなうこと。
2.
上記閉庁期間中に、生活困窮者及び生活保護申請者に対し、必要に応じて、宿泊場所や食事の提供、
またはその費用の給付・貸付等を適切に、かつ速やかにおこなうこと。
3.
生活困窮者が上記閉庁期間中に、1及び2の施策を利用できるように、
連休前、連休中に積極的に情報発信・広報の活動をおこない、その利用を促進すること。
4.
上記1及び2の事項が適切におこなわれるように、各自治体への周知徹底をおこなうこと。
大口善徳厚労副大臣に要望書を提出
上記の実現を目指して、4月16日に大口善徳厚労副大臣に要望書を渡しに行きました。
その際に、副大臣から政令市等に対して、10連休中に生活困窮者やホームレス状態の人への支援について、
何らかの対応をするかどうかなどを問い合わせている、との回答がありました。
事実、4月19日には、厚労省から、都道府県、政令市、中核市に下記の文書が発出されました。
本年4月27日から5月6日までの10連休における 生活困窮者支援等に関する対応事例の周知について
https://www.mhlw.go.jp/content/ 000504844.pdf
この文書により、連休中にすべての自治体ではないものの、
「輪番制や緊急連絡網の整備、緊急一時的な衣食住の提供体制の確保、窓口の臨時的な開所等」の対応を
おこなう自治体があること(ただし自治体名は公表されていない)、
厚労省としてはこれらを参考に各自治体において支援を適切におこなってほしい、ということと、
追加で費用が発生した場合は今後予算の補助協議に応じる、とを伝えている、ということがわかりました。
これまでは、年末年始などもふくめた大型連休や、通常の土日、夜間なども、
生活保護の申請書は夜間休日窓口でも受け取る、ということは全国的な運用として示されていたものの、
実際の緊急一時的な衣食住の提供、などの公的支援は、
政府としては「各自治体ごとの判断である」との見解を崩してこなかったので、大きな前進と言えます。
もちろん、どこの自治体で実際に連休中に支援がおこなわれたのかなどは非公開なので、
まだまだ問題は多いものの、風穴が少しあいたのではないか、と考えることはできます。
生活保護制度の運用について、10連休の閉庁期間中の公的支援についてなど、
2019年もさまざまな要望や提言を現場の視点をもとに始めています。少しずつですが成果も出てきています。
公的支援の拡充を求めて、〈もやい〉の要望、提言活動にさらに力を入れていきたいと思っています。(大西)