認定NPO法人 自立生活サポートセンター・もやい

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もやいブログ

2019.7.3

おもやいオンライン

〈もやい〉ボランティアインタビュー[1]:遠藤さん

〈もやい〉では、生活相談、入居支援、交流といったさまざまな事業があり、これらの事業には数多くの方にボランティアとして携わっていただいています。今回はそんなボランティアの1人遠藤さんに、〈もやい〉との出会いや、日々の活動の中で感じていることなどについて入居支援事業スタッフの武笠がインタビューしました。

生活相談・支援事業のボランティアとスタッフたち

〈もやい〉との出会い

― 最初に〈もやい〉に来られたのはいつですか?

2016年の7月でした。

― なにがきっかけで?

〈もやい〉を知ったのは年越し派遣村の報道だったと思います。その頃わたしは働いていましたのでここに来られなかったのですが、貧者の一灯でわずかばかりの寄附を続けてきました。

2016年5月に仕事を辞めました。現役中は仕事にかかりっきりなので、何かしたい気持ちがあってもできなくて。退職したらボランティアをしようと思っていました。

インタビューに答える遠藤さん

― なぜ〈もやい〉に?

仕事を辞めて1ヶ月くらい後片付けして、そろそろ始めようと思ったときに、いくつか考えていたリストの中で、スケジュール的にたまたま最初に〈もやい〉に来ることになりました。

― 最初に来た印象はどうでした?

わたしが参加し始めた頃は、相談者の数が少なく、けっこうヒマでした。まだ人間関係ができてない頃のヒマは居心地が悪く辛かった。相談者が多いか少ないかは予想がつかないし、波があるのも仕方がないと今は思いますが・・。

― そうでしたか。最初の日はどんな日だったか覚えてらっしゃいますか?

覚えています。最初の相談はかなり自立した人でした。サバイバーっていうのかしら、自分で問題を解決してきた方。もちろん困って来ているわけだけれど〈もやい〉として何かをしてあげられるという人ではなかったの。でも、「話を聞いてもらって、こうしようかなという自分の道筋はできたので、よかった」と言ってご本人は帰られました。

― 入ってみてどうでしたか?

かなり珍しい人だなと思いました。いま考えてもそう思いますね。典型的な相談ではなかったし。

― 典型的な相談って?

生活保護申請を今日、明日にもしたいという人が圧倒的に多いんじゃないでしょうか。もちろん申請後の相談もありますけれども。

 

申請同行

― いまのは火曜日の生活相談ですよね。ほかのお仕事は?

生活保護の申請同行をしています。

― いままで何件くらいやられていますか?

80件位はしていますね。

― 多いほうですよね。

現役の人は火曜も水曜もというわけにはいかないでしょうから、時間の余裕のある者がやらないとね。

申請同行のイメージ

― 〈もやい〉でボランティアをしてみて、思ったとおりでしたか?

わたしも若くもないしそれなりに世の中を見ていますので、思ったとおりといえば思ったとおりかしらね。ただ東京近郊に関して言えば、広い意味でのホームレス、つまり居所なしの方については「待機場所」が一番問題なんだなと思いました(※)。

※とくに東京都では、アパートなどの安定した住まいを持たない人が生活保護を申請した場合、アパートに入居するまで一時的に施設等に入ることがあります。「待機場所」というのはこうしたときに入る場所のことを指しています。

わたしはそれまでネカフェとかドヤとかに行ったことがありませんでした。福祉事務所で、ハンディキャップのある人に、2千円出して「ネカフェ泊って明日また来て」と。わたしは、「この人に向かってそう言うのは『路上で寝ろ』と言うのと同じですよね。」と言いました。目も耳も不自由なのに、「壁伝いに歩いて探せばいい」と。あんなにひどいこと言われたのは初めてです。それでネカフェに一緒に行ったことがあります。

― ほかに福祉事務所で交渉したことは?

いっぱいありますよ。

― いちばん覚えているのは?

水際作戦にわたしが、ひっかかったことがあります。

― 水際作戦というのは、申請の要件を満たしていても「帰れ」と?

「帰れ」とは言われなかったけど、違う方向に指示されました。まあ今振り返ってみてもあれほど冷たい、まるで能面のように、なんの共感も示さず、相談者を糾弾するような口調で、「あなたはこれだけの収入があるのになんの蓄えもしなかったのですね」と。最終的にはそれなりの所を紹介してくれましたが、彼はかなり傷つきました。口調ですよね。ものすごく共感してくれとは言いませんが、人の話を聞く、言い分を聞く、という態度でないと・・・。壁に向かってものは言えませんよね。終わった後も「二度とここには来たくない」と。

― 生活保護申請について行ってよかったと思われますか?

本当のところはわからないけれども、例えば別の方ですが、2回水際にあって3回目にわたしが同行したんですけど、ご一緒したご本人は、「同じ相談員だけど、ぜんぜん態度が違う」と言うのよ。その窓口の人、相談者に対して、最後に「お客様」とまで言ったんです。

― 「お客様」ですか。

― 遠藤さんは、最近は申請同行、お一人で行かれているのですか?

ボランティアが足りないからですよ・・ほんとうは原則二人なわけでしょ。初めて「一人で行って」と言われたときはびびりましたよ。

― どのくらいで言われました?

7月から始めたでしょ。次の年の1月かな。12月まで暇だと思っていたら1月に急に忙しくなって。

― ボランティアといっても責任重大ですもんね。

そうですね。それなりにその人のニーズに応えてあげられたと思う日は帰りの足取りは軽いですが、あーっと思うような辛いときもありますよね。

― 後悔することはありますか?こうすればよかったな、とか。

それはいっぱいありますよ。ちょっと頭が働かなかったな、別の提案もあったかなとか。さっとうまくいかないときね。落ち込みますね。

 

〈もやい〉に来る理由

― もうやめちゃおうかな・・とか思ったことは?

それはありません。

― もしかしたら〈もやい〉、魅力あるんですかね?それとも使命感とか?

いやー(笑)、悪いけど使命感ではやらないようにしてるのね、〈もやい〉がとてもすきだから、というのともちょっと違う、どちらかというと、まあなんというのかしら、「自分のため」でもあるのね。リタイアして好きなことやっていればいいんですが、お金はなくてもまあ生活はできるわけなので。ひとりがすきなほうなので、ほっとけば誰とも話をしないという生活になるわけですね、それはそれできらいではないんだけど。でも、この歳でそれは危険でしょ。人や社会とつながっていないと・・。

― でも、「自分のため」といっても、音楽とか俳句とかもっと他にあるじゃないですか?

そういう意味では、わたしの今まで生きてきた過程のなかで、「貧困」とか「格差」に対する問題意識があったから来ましたよ。そうでなきゃ来ない。

だって、今若い人たちのこと考えると「ええっ」て思うことがたくさんある。もちろん、わたしたちの若い頃より良くなった面もあるとしても、この格差の問題は、何という社会をわたしたちは手渡そうとしているのか?という思いがあります。やっぱり非正規の人たちがこれだけ増えている、こんな稼ぎでこんなに健康保険料を払っている。わたし、若い頃安月給だったけど税金が高くてやだなと思ったことなかったですしね。10何万くらいしか稼いでいない人がごっそり持って行かれてるわけでしょ。

― 若い人って〈もやい〉に来る人の中で多いですか?

そうね、若い人も来るし、もう少し上の人のロスト・ジェネレーションでインテリジェンスをもった人も来ますね。何でこの人に仕事がないんだろうと思います。

― さきほど待機場所の話が出ましたが、待機場所の問題についてはどうですか?

あまりにもひどいなと。仮に今日アパートを捜し始めてもすぐには入れないわけですから、待機場所があっても構わないとは思いますよ。でもその待機場所が、ほとんど自由になるお金もなく、劣悪な条件なのが、問題です。

― 待機場所に長く留まっているという話は聞きますか?

よく聞きますね。そんなところに入っちゃうと、本来働く意欲があったとしても働く意欲を削いじゃう気がしますね。精神疾患をお持ちの人も多いし、病状を悪化させるだけだと思います。ほとんどの人が個室を希望しますから。

 

風通しがいい

― 〈もやい〉に来て自分は変わったと思いますか?

そうねえ…(考え込む)。あんまり変わんないかも。ごめんなさい(笑)。

― やりがいがある?

いや、でもそういう意味でいうと、なんでここに来て、ほかのところに行かないか、というと、わたしは〈もやい〉の売りはこれだとおもうんですね(机の上のオリエンテーション資料中『女だから、男だから…などで仕事を頼むのはやめましょう・・・』の部分を示す)。

わたしは、女性として、かなり男社会に違和感と怒りをもって生きてきたので、オリエンテーションでこの説明を受けたとき、「ああー、ここいいな!」と思ったの。若い男性にこういうこと言われるのってとてもいいな、と思ったの。

― あとでこれコピーさせてもらっていいですか。

これはここのですよ(笑)。わりと進歩的な団体でも、りっぱなこと言いながら会議が終わったらお茶碗洗うのは女だったりして。そういうのにはうんざりしていたので。そういうことがないんだって。それは〈もやい〉を選んだひとつの理由です。

〈もやい〉のオリエンテーション資料

― 入ってみていかがでしたか?

パーフェクトではないけれど、火曜の相談日についてはまかない担当のKさんの存在とかは大きいですね。

― Kさんはもと当事者の男性ですね。メインで入ってくださっていますね。世代が上の男の人も自然とまかないや掃除を率先してやるようになりますよね。

最初はどうやっていいんだかわからないんだとおもうのね。

あとはこれね(オリエンテーション資料の『ゆっくり、気長に関わっていただけるのが一番ありがたいです』のくだり)。「今日休みます」とかわざわざ言わないでいいのは助かります。全体的に風通しがいいと感じます。

 

人手が足りない

― 〈もやい〉のボランティアとして最近思うことは?

やっぱり人手不足だからね…。たとえば申請同行だって、わたしが入った当時は、二人が原則だったけど、結構一人で行ってるじゃないですか。二人のほうがお互いに心強いですね。あるとき「これは一人では大変だから一緒に行ってほしい」とスタッフに言ったのに、新人と二人になっちゃって。そうやって鍛えられるからいい面もありますが。お互い助けてもらえますね。この間の同行も一人でいっても(福祉に)繋がれたとはおもうけど、始終バクバクしながらやるしかなかったなと思う。二人なら、居てくれるっていうだけで心強いから。

― 遠藤さん、なんで来てくれているの? (ここで大西理事長登場)

不謹慎かもしれないけど、わたしはこの仕事がすきなんだと思うし、たのしいから来ている。でも、「たのしい」という言葉が適切かどうか・・・。せっばつまってようやく相談に来る人には失礼な気がします。さまざまな辛い人生に、息を呑むこともあり、こちらも学ぶことが多いのです。

― たのしい、はすごくだいじですよね(大西)。そういう場だということがあまり知られてないのかな(大西)。

だって〈もやい〉そのものを知らない人が圧倒的に多いわけだから。

そういえば、火曜の朝ミーティングでね、「やりたくないならやらないでいい」って、必ず紙持ってYさんが言うじゃないですか。「つらくなったら代わってください」とか。それを言ってもらえることはとても居やすいですよね。

 

〈もやい〉のボランティア

― ところで、〈もやい〉のボランティアはこういう人じゃないと、というのって、なにかありますか?

人権意識とかジェンダーとかの視点を持っていることは大事よね。上からものいう人とかはちょっと難しいかしらね・・。ただ、だからといって排除するのではなくそれぞれのところで話をしたり、ということにはなると思いますけどね。

― 最後に〈もやい〉って、ボランティアがいないとどうしようもないですよね?

その割に「研修」がないよね、とは思います。だってわたし初期の座学がなかったからほとんど耳学問でしたよ。待機場所とか、生活保護の要件とか。

― すみません。いま「しおり」を作っているので、ぜひご意見をお願いします。

― 最後に〈もやい〉に関わってもいいな、と思っているひとに向けて一言お願いします。

わたしは生活相談と申請だけやっているけど、他にも不動産・入居とかサロン・コーヒーなどいろいろあります。

あとは、〈もやい〉は、日本の貧困問題を通じて世の中を見るという場でありチャンスでもありますよ、みたいなことでしょうか。

― 今日はありがとうございました!

 

編集後記

ボランティアの声をインタビューしてお届けしよう!ということになり、トップバッターとして遠藤さんにお願いしました。

遠藤さんのあたたかく率直なお話は、〈もやい〉の現在を見つめなおし未来を考える上でとても参考になりました。ありがとうございました。

ボランティアにご興味のある方はどうぞまずはボランティアセミナーにお越しください。お待ちしております。

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