代理納付を知っていますか?
みなさま、「代理納付」という制度をご存知ですか。
生活保護の住宅扶助費は、実費(上限あり)が受給者に対し現金で交付されるのが通常です。ところが、生活保護法37条の2により、福祉事務所から家主に直接、住宅扶助費(共益費を含む)が支払われることがあります。これを「代理納付」といいます。
代理納付は、平成18年3月31日付厚生労働省社会・援護局保護課長による「生活保護法第37条の2に規定する保護の方法の特例(住宅扶助の代理納付)に係る留意事項について」(平成26年改正)により、滞納している生活保護受給者に限らず、実施機関が対象者を決めることができるとされており、その活用はある程度実施機関の裁量に委ねられています。
入居支援の現場でも、たとえば精神疾患が悪化し、生活が乱れがちになり、滞納になってしまった方が代理納付の手続きを申請することなどがあります。
国は、近年、生活保護受給者の民間賃貸住宅への円滑な入居を進めるため、代理納付のより積極的な活用を呼びかけています。
なぜ「代理納付」は広まらない?
代理納付が広まれば、受給者の入居の促進や家賃トラブルの減少というメリットがあるでしょう。しかし、自立促進という生活保護の趣旨に反するのではないか、貧困ビジネスの参入に力を貸すことになるのではないかという懸念や事務負担の増大という課題があり、いまだ導入が進んでいない地域もあります。
毎月家賃を自分で払うとなると、うっかり忘れたり、つい使ってしまったりということもないとはいえません。ですから、公共料金の口座引き落としのように、代理納付のほうが便利という意見もあると思います。
他方、以前、大家さんも入居者さんも高齢で、毎月家賃帳にハンコを押してもらって世間話をしているというお話をお聞きしたことがあり、これは代理納付では得がたい交流だなあと感じたこともあります。
また、半就労半福祉の方の場合、住宅扶助費が満額出ない月が発生し、その月は代理納付が不可能なので知らない間に滞納になっていて管理会社とご本人があわてるというケースもあります。
いずれにしろ代理納付は、滞納がない場合はまずはご本人の意思を確認してからという福祉事務所が多いかと思います。
利用する場合は制度のメリット・デメリットについて十分に説明を受けることが大切だと思います。(入居支援事業:武笠)
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