本日(2018/06/07)認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやいは、生活保護制度についての課題や運用の改善を求める要望書「生活保護制度の改善および適正な実施に関する要望」を、厚生労働省へ提出。申し入れをおこないました。
以下、その要望書の内容を全文掲載します。
2018年6月7日
厚生労働大臣 加藤 勝信殿
認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい
理事長 大西 連
東京都新宿区山吹町362番地みどりビル2F
Tel:03-6265-0137 Fax : 03-6265-0307
E-mail :info@npomoyai.or.jp
生活保護制度の改善および適正な実施に関する要望
日頃よりの貴省および政府の社会保障分野への真摯な取り組みに対し、深い敬意を表します。
私たちは、日本国内の貧困問題に取り組む団体として、生活に困窮された方が生活保護などの社会保障制度を利用するにあたっての相談・支援や、安定した「住まい」がない状態にある方がアパートを借りる際の連帯保証人の提供、サロンなどの「居場所作り」といった活動をおこなっている認定NPO法人です。
2001年の団体設立からこれまでに、のべ約3,000世帯のホームレス状態の方のアパート入居の際の連帯保証人や緊急連絡先を引き受け、また、生活にお困りの方から寄せられる面談・電話・メール等での相談は、年間4,000件近くにのぼります。
日夜、生活困窮者の相談をうける立場として、特に生活保護制度についての課題や運用等において改善が必要である、と考える事項も多く、このたび、以下の点について要望をいたします。
なお、本書においては、関係する行政文書等について次の略称を使用する。
『次官通知』:昭和36年4月1日厚生省発社第123号「生活保護法による保護の実施要領について」(第110次改正 平成29年3月31日厚生労働省発社援0331第2号)
『局長通知』:昭和38年4月1日社発246号「生活保護法による保護の実施要領について」(第103次改正 平成29年3月31日社援発0331第4号)
『課長通知』:昭和38年4月1日社保第34号「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(第78次改正平成29年3月31日社援保発0331第10号)
『問答集』:『生活保護手帳別冊問答集2017』,2017,中央法規出版
目次
- 1 1.生活保護基準等の見直しについて
- 2 2.居住地を持たない保護の申請者および被保護者の取扱いについて
- 3 3.世帯の認定について
- 4 4.資産の活用について
- 5 5.扶養義務の取扱いについて
- 6 6.住宅扶助について
- 7 7.収入認定について
- 8 8.法第78条の適用について
- 9 9.就労指導のあり方について
- 10 10.後発医薬品の取扱いについて
- 11 11.窓口における正確かつ適切な制度の説明について
- 12 12.保護費の過誤支給について
- 13 13.福祉事務所の体制の強化について
- 14 14.生活保護にかんする広報・啓発について
- 15 15.外国籍の者の保護について
- 16 16.性的少数者への適切な対応について
1.生活保護基準等の見直しについて
先般、厚生労働省社会保障審議会生活保護基準部会による報告書が公表され、生活扶助基準および母子加算、児童養育加算ならびに教育扶助についての見直しが進められている。とくに、生活扶助基準と母子加算の見直しについては、今回採用されている、いわゆる「水準均衡方式」について、複数の委員からその妥当性への疑義が寄せられていることは上記報告書および部会での議論の内容から明らかである。
今回の見直しによって基準額の減少が見込まれている被保護者からは、弊法人を含む支援団体に対し、今後の生活についての不安の声が寄せられている。たとえ現時点では「水準均衡方式」が、生活扶助基準の検証の手法として他の手法よりも妥当と考えられたとしても、それは生活保護基準の検証の手法として十分に妥当であることを意味しない。以上の点を踏まえて、次の通り要望する。
第一に、今回の生活扶助基準見直しによって、被保護者に対して支給される保護費が減少することのないよう、慎重に見直しを進めること。
第二に、母子加算と児童養育加算の見直しによって、子どものいる被保護世帯に対して支給される保護費が減少することのないよう、慎重に見直しを進めること。
第三に、本国における社会・経済的状況の変化を鑑み、被保護者を含めたより多くの人にとって納得のゆく、また専門的見地からしてもより妥当と言えるような扶助基準の見直しの手法の開発に向けて、厚生労働省内で具体的な議論をおこなうこと。
※現時点(2018年3月6日時点)での生活扶助基準の見直し案では、全世帯の約67%が削減、有子世帯の43%、母子世帯の38%が削減されると言われている。増額する世帯もあるということでもあるが、削減する世帯への生活の影響を考え、削減については撤回することを要望する。
2.居住地を持たない保護の申請者および被保護者の取扱いについて
2-1.居住地を持たない保護の申請者と居宅での生活扶助実施の原則(1)
生活保護法第30条は、「生活扶助は、被保護者の居宅において行うものとする。ただし、これによることができないとき、これによつては保護の目的を達しがたいとき、又は被保護者が希望したときは、被保護者を救護施設、更生施設若しくはその他の適当な施設に入所させ、若しくはこれらの施設に入所を委託し、又は私人の家庭に養護を委託して行うことができる」と定めている。
これと関連して、平成15年7月31日社援保発第0731001号「ホームレスに対する生活保護の適用について」(平成21年3月27日社援保発第0327001号により第1次改正)の2-(1)は、「ホームレス」の申請者との面接相談時に「居宅生活を営むうえで必要となる基本的な項目(中略)の確認により、居宅生活を営むことができるか否かの点について、特に留意すること」とした上で、2-(2)で「ただちに居宅生活を送ることが困難な者」については保護施設や無料低額宿泊所等への入所を検討することとし、2-(3)で居宅生活への円滑な移行に向けて必要な支援に努めることとしている。なお、居宅生活への移行に際しては、『局長通知』第7-4-(1)‐キにより住宅を確保するための敷金等(以下、転居に際する一時金)を支給することとなっており、「居宅生活が認められる」か否かの判断の視点が『問答集』問7‐107への回答によって示されている。
しかしながら、居住地を持たない申請者、とくに「ホームレス」に対してこのような原則にそぐわない対応を一律に行うことは、生活保護法第9条に定める「必要即応の原則」には当たらない、不当な扱いであり、違法の疑いがある。以上の点を踏まえ、次の通り要望する。
居住地を持たない、「ホームレス」状態にいる者からの保護の申請があったときには、申請者がとくに別の取扱いを希望した場合を除き、居宅において生活扶助を行うこととすべきであり、やむを得ず一時的に保護施設若しくは無料低額宿泊所等に入所させた場合であっても、居宅生活を行う上で必要な支援を実施することを前提として、速やかに居宅生活へ移行するよう、関連する通知等を改訂し、関係機関に周知徹底すること。
2-2.居住地を持たない保護の申請者と居宅での生活扶助実施の原則(2)
上記のとおり、生活保護法と厚生労働省社会・援護局による通知は「ホームレス」状態にいる者からの保護の申請に関する運用を定めているが、このような運用でさえも正しく行われていない実態がある。具体的には、正当な理由の説明なしに無料低額宿泊所若しくは簡易宿所等に1年以上の長期間にわたって収容されており、居宅生活への移行ができていないケース、アパートへの転宅を希望しているにもかかわらず「就職しなければアパートへの転宅は認められない」などと、『問答集』問7‐107で挙げられている「視点」のいずれにも該当しないような理由をつけて、転居に際する敷金等の支給を求める申請を受理しないケースなどがある。いうまでもなくこれらは被保護者の正当な権利を侵害するものである。以上の点を踏まえて、次の通り要望する。
生活保護法および厚生労働省社会・援護局により発出された通知等に基づく、適正な制度の実施・運用が行われるよう、関係機関に指導を徹底すること。
2-3.居住地を持たない保護の申請者の居所の確保
生活保護法第19条第1項は、「居住地がないか、又は明らかでないよう保護者であつて、その管理に属する福祉事務所の所管区域内に現在地を有するもの」に対して、保護の実施機関は「保護を決定し、かつ、実施しなければならない」と定めている。
現在の生活保護法では保護の決定がなされるまでの間に申請者の健康的で文化的な最低限度の生活の保障についての定めがなく、極度の困窮状態にいる者に対して、実際には各種の法外援護がなされているが、自治体によって対応に差が生じている。また、現在地での保護申請がなされた場合に、簡易宿泊所等が一時的に利用されることがある。しかしながら、一部、保護の実施機関が、このような場合に宿泊費の貸付(法外援護)をするにとどまり、申請をした者本人に対して、利用する簡易宿泊所を探すよう求めるケースが確認された。以上の点を踏まえて、次の通り要望する。
第一に、所持金が少ないなど、保護の決定がなされるまでの間、健康で文化的な最低限度の生活を送ることが困難であるような場合における生活の保障を生活保護制度内に位置付けるよう、法改正を行うこと。
第二に、居住地を持たない者が現在地において保護の申請をし、かつ、申請者が簡易宿所等を一時的に利用するような場合において、当該の申請を受理した保護の実施機関は、保護の決定がなされるまでの間、申請者の最低限度の生活が保障されるべく適切な対応がなされるよう、関係機関に指導を徹底すること。
2-4.無料低額宿泊所の実態の把握および指導と保護行政の改善
とくに都市部において、社会福祉法第2条第3項に規定する生計困難者のために無料又は低額な料金で宿泊所を利用させる事業を行う施設(以下、無料低額宿泊所)を被保護者に利用させるという運用がしばしばなされている。これについては、厚生労働省社会・援護局より、平成15年7月31日社援発第0731008号「社会福祉法第2条第3項に規定する生計困難者のために無料又は低額な料金で宿泊所を利用させる事業を行う施設の設備及び運営について」(第2次改正 平成27年4月14日社援発0414第7号)、平成20年12月10日社援保発第1210001号「社会福祉法第2条第3項に規定する生計困難者のために無料又は低額な料金で宿泊所を利用させる事業を行う施設に対する留意事項について」、平成21年10月20日社援保発1020第1号「生活保護受給者が居住する社会福祉各法に法的位置付けのない施設及び社会福祉法第3項に規定する生計困難者のために無料又は低額な料金で宿泊所を利用させる事業を行う施設に関する留意事項について」などの通知によって、厚生労働省から関係機関に対する技術的助言がなされているところである。
しかしながら、弊法人を含む支援団体には、無料低額宿泊所および無届の宿泊所における処遇に関する相談がしばしばもたらされており、その劣悪な実態がうかがわれる。具体的には、居室の環境が劣悪であったり、居室の利用以外のサービスについての契約を結ばない意思を示した場合に退去を迫られたり、使途が不明瞭な費用の支払いを迫られるなどの事態が現に生じている。
また、上記「居住地を持たない保護の申請者と居宅での生活扶助実施の原則(1)」でも述べたように、本来、被保護者に無料低額宿泊所等を利用させることは例外的な処置であり、強制的なものであってはならない。
なお、現時点(2018年3月6日時点)では、都市部を中心とした自治体では居住地を持たない保護の申請者に対して、上記に記したようなあたかも保護施設や無料低額宿泊所等への入所が申請の前提であるかのような窓口対応が常態化している。こういった各自治体の福祉事務所での運用は、申請者の権利を著しく制限しているのみならず、必ずしも個室やプライベートに配慮されていない環境である保護施設等での生活を強要するもので、早期の改善が求められる。以上の点を踏まえて、次の通り要望する。
第一に、無料低額宿泊所等について、その契約やサービス、居室の環境などの実態を、入所者に対する調査を通して明らかにし、それを公表すること。
第二に、無料低額宿泊所等について、入所者が苦情を訴えることができる窓口を常設し、それに基づき調査を行い、必要に応じて無料低額宿泊所等に対する行政処分を行うこと。なお、これにより被保護者が不利益を被ることのないよう、アパート等への滑な移行を推進するなど、関係省庁を巻き込んだ抜本的な改革を進めること。
第三に、無料低額宿泊所等を被保護者に利用させることを所与の事態とせず、生活保護法第30条の趣旨に則った生活保護制度の運用を行うよう、関係機関に指導を徹底すること。また、あわせて、いわゆる「居宅保護」を原則とした生活保護法に適した運用をおこなえるように、各自治体においても早期のアパート転宅に向けた支援が展開できるように、これまで以上に住宅支援等の充実に向けた予算措置等を講じるべきである。
3.世帯の認定について
3-1.大学等への世帯内就学
生活保護制度においては、義務教育にかかる費用と高等学校等への就学にかかる費用について、それぞれ教育扶助と生業扶助の高等学校等就学費として支給することが可能とされている。他方で、高等教育については、『局長通知』第1の5において、高等教育機関に就学している者に対して、世帯分離を行うことが認められている。
厚生労働省社会・援護局社会保障審議会の「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」第4回(平成29年7月11日)の資料1において示されているように、平成28年4月1日現在の生活保護世帯の子どもの大学等進学率は33.1%となっており、全世帯の大学等進学率の直近値73.2%に対して非常に低いものとなっている。言うまでもなく、高等教育への進学率の違いはその後の生活水準の違いに大きな影響を及ぼしうるものであり、現状は貧困の世代間再生産が生じている状態であると考えられる。生活保護制度の目的は、その法によれば、国民の「最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長すること」となっている。しかしながら、貧困の世代間再生産が生じていることを鑑みれば、生活保護制度は残余的な位置にとどまらず、この状況を改変していく積極的役割を果たしうるものとなるべきと考える。
加えて、局長通知第1‐3は高等学校等の就学に関し、原則として保護を受けながらの就学を認めている一方で、「ただし、専修学校又は各種学校については、高等学校又は高等専門学校での就学に準ずるものと認められるものであって、その者がかつて高等学校等を終了したことのない場合であること」として例外を定めている。しかしながら、このような規定は、自立の助長となりうる就学について、被保護者の意欲をそぐものとなりかねない。以上の点を踏まえ、次の通り要望する。
第一に、保護開始時において、現に大学で就学している者が、その課程を終了するまでの間、あるいは特定の貸与金、給付金等を受けて大学で就学する場合に、その者を世帯から分離することなく、保護を行うよう、生活保護法ならびに関連する通知等の改正もしくは改訂を行うこと。
第二に、高等学校等をかつて修了した場合であっても、保護を受けながら専修学校および各種学校へ進学することが認められるよう、局長通知第1‐3および関連する通知等の改訂を行うこと。
3-2.世帯分離について
『局長通知』第1の2は世帯の認定に際して、「世帯分離して差し支えない」場合について定めている。この中で、第1の2‐(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(8)は括弧書きで「世帯分離を行わないとすれば、その世帯が要保護世帯となる場合に限る」とされている。『局長通知』第1の2は、とくに(3)、(5)、(6)、(7)、(8)について機械的な適用をすべきではなく、「世帯の状況及び地域の生活実態を十分考慮したうえ実施すること」としている。
しかしながら、このような制度設計においては、世帯全体が要保護状態になるまで世帯分離ができないと解釈され、そのように運用される可能性がある。その場合には、その世帯の生活の安定を損ない、自立を妨げることにつながりかねない。これらの点を踏まえ、次の通り要望する。
『局長通知』第1の2‐(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(8)における括弧書き「世帯分離を行わないとすれば、その世帯が要保護世帯となる場合に限る」を「世帯分離を行わないとすれば、その世帯が要保護世帯となることが見込まれる場合に限る」と改訂し、その他の通知等についても必要な改訂を行うこと。
※現時点(2018年3月6日時点)において、生活保護法改正法案のなかで、大学等へ進学する生活保護世帯の子どもに対して、一時金として簡素な給付をおこなうことが盛り込まれているほか、「世帯分離」をおこなったあとに「世帯人数の減少にともなう住宅扶助の減額をおこなわない」ということが議論されている。もちろん、これらは生活保護世帯の子どもの大学等への進学へのハードルを下げるための施策と言えるがまだまだ不十分である。事実、例えば、生活保護家庭の子どもが大学に入学するには入学金等の費用も必要であるが、今回新設される一時金では金額的に到底まかなえない。(学生支援機構等の融資は4月以降にならないと支給されないのが通例で入学金等は3月中に支払わなければならないなど)。こういった実態からも、現状の「世帯分離」を前提とした運用ではなく、「世帯内進学(就学)」を可能にし、奨学金やアルバイト代等は自立更生計画の策定等を義務付けることにより、生活上の負担がその子どもに生じないような方法を模索するべきである。
4.資産の活用について
4-1.生活用品としての自動車等の保有について
『課長通知』の「第3 資産の活用」問9と問12において、通勤または通院等のために自動車を保有することが認められている。また、『問答集』問3‐14「自動車の保有」において、事業用品としての自動車の保有が一定の条件のもとで認められる余地が示されている。しかしながら、同問3‐14において、「生活用品としての自動車については原則的に保有は認められない」とされている。
自動車は、公共交通機関の整備状況や、さまざまな資源の配置などの、個別の地域の社会的、地理的条件等によっては、日常生活を送るために必要不可欠なものである。これにもかかわらず、現在の生活保護制度では生活用品としての自動車の保有が原則として認められていない。このような状況は、地域によっては生活保護制度を利用することを、その権利者にためらわせることにつながっていると考えられる。以上の点を踏まえて、次の通り要望する。
生活保護制度において、生活用品としての自動車の保有を原則として認めると同時に、その維持・更新にかかる費用について、一時扶助費の支給または収入認定除外を行うなどの措置をとることができるように制度を改善することを求める。なお、同様の理由から、オートバイおよび原動機付自転車についても、生活用品としての保有・維持・更新が原則として求められるよう、実施要領の改訂を行うこと。
4-2.パソコン等の保有
『局長通知』第3の3は、生活保護を利用するにあたって、保有することが認められる資産の一環として事業用品をあげている。しかしながら、就労収入を得ることができる仕事を行うに当たり、必要となる、あるいは現に必要としているにもかかわらず、パーソナルコンピューター(以下、パソコン)などの事業用機械器具を保有することを認められず、処分することを求められるケースがある。
パソコン等は、一部の業種において、円滑に業務を行うために必要不可欠なものであり、また、個人情報が記録されうる機械であることから常識的に貸し借りが行われるものではない。したがって、この保有が認められないということは、被保護者が就労し、そのことによって収入を得る機会を損なうことにつながりうる。以上の点を踏まえて、次の通り要望する。
被保護者が就労やその準備のために必要とする場合に、パソコン等の機械器具を保有することが認められるよう、関連する通知等を改訂すること。
4-3.生活保護法第63条にかかる資力の発生時点の取扱いについて
『問答集』問13‐6「費用返還と資力の発生時点」において、生活保護法第63条に基づく費用返還請求の対象となる資力の発生時点についての厚生労働省社会・援護局の見解が示されている。ここで、相続の場合における費用返還の対象となる資力の発生時点は、民法の解釈に基づき「被相続人の死亡時と解すべきである」とされている。また、年金等が遡及して支給される場合については、資力の発生時点は「年金支給事由が生じた日」と解釈すべきであるとされている。
しかしながら、現実には、相続により遺産が利用可能な状態となるにいたるまではある程度の時間を要することがあり、また、被保護者と被相続人との間の関係性いかんによっては、被保護者が民法に定める相続の権利義務を継承したことを知らずにある程度の時間が経つことがある。また、年金等の遡及支給が行われる場合においても、被保護者が遡及支給を受ける権利について認識しておらず、現実に支給を受けるまでに時間を要することがある。このような場合において、資力の発生時点を機械的に「被相続人の死亡時」と解釈することは不当である。以上の点を踏まえて、次の通り要望する。
生活保護法第63条に基づく費用返還請求の対象となる資力の発生時点の解釈にあたり、当該資力を実際に利用可能なものにするための手続き等に要する時間や、被保護者が自らの資力について認識しているか否かなどの事情を考慮するよう、各福祉事務所に厚生労働省社会・援護局保護課から通知によって指導することを求める。
4-4.資産調査について
厚生労働省社会・援護局は平成27年3月31日に実施要領の取扱いを変更する通知(社援保発0331第1号)を発した。この通知では、保護の実施機関は最低年1回の資産申告を被保護者に対して求めることとされている。この通知を受けて、資産の変動等が見込まれるとは認めがたい場合においても、資産申告を求められ、さらに、これに応じない場合には保護の停廃止を含む保護の変更を示唆されるという事例が確認されている。
生活保護法第61条は、生計の状況に変動があった場合に届け出を被保護者に義務付けているが、上記のような場合においては、このような義務が課される条件を満たしていない。また、具体的な必要性が認められない場合に資産申告を求め、これを拒んだことをもって保護の停廃止を行うことは、生活保護法第27条、62条の趣旨にそぐわないものである。以上の点を踏まえ、次の通り要望する。
被保護者に対して資産の申告を求めるのは、資産の状況に変動があったことが明らかと客観的に認められる場合に限られるべきであること、また、申告の求めに応じなかったことのみをもって保護の停廃止を行ったり、それを被保護者に対して示唆したりすることが不当なことであることを明確にし、関係機関に対し周知徹底すること。
4-5.年金担保貸付の取扱い
厚生労働省は、平成18年3月30日社援保発第033001号「生活保護行政を適正に運営するための手引きについて」(第5次改正 平成28年3月31日第2号)により、「過去に年金担保貸付等を利用するとともに生活保護を受給していたことがある者が再度借り入れをし、保護申請を行う場合には、資産活用の要件を満たさないものと解し、それを理由として、原則として、保護の実施機関は生活保護を適用しない」としている。厚生労働省は同通知において、上記に該当する場合であっても、急迫状況にいるなどの場合には生活保護の適用がなされる可能性があることを示している。
しかしながら、たとえ、年金担保貸付等を利用することにより、本来利用できるはずの年金等を利用できなくなったとしても、それをもって資産活用の要件を満たしていないとみなし、最後のセーフティネットともいわれる生活保護制度から排除することは不当である。以上の点を踏まえて、次の通り要望する。
「生活保護行政を適正に運営するための手引きについて」のI‐6を削除することおよび、関連する通知等を改訂すること。
※現時点(2018年3月6日時点)では、特に地方において自動車等の保有は死活問題である。都道府県・政令指定都市別にみた母子世帯の世帯保護率(2015年度、1カ月平均)(推計値)を見ると、東京都は19%に近い世帯保護率である一方、富山県は、わずか0.61%の世帯保護率など、一般的に自動車等の保有が必要である地方に行けば行くほど保護率が下がるという傾向がある。(藤原千沙「地方における母子世帯の暮らしと生活保護ー自動車の保有・使用の視点から」『月刊自治研』2017.7 vol59 no.695)。弊法人を含む支援団体へ寄せられる相談においても、自動車等の保有が生活保護の申請の妨げになっている事案も多く、早期の改善が必要である。
また、パソコンの保有に関しては、2017年に「生活保護受給世帯の就職活動にパソコンが必要なら,知人等から借りて賄えばいい。」という判決(東京地判平成29年9月21日)がでているが、これは資産活用の論点ではなく収入認定における費用返還請求に関しての裁判においての判決であることは留意が必要である。自立の助長の観点からもパソコン等の保有について認める通知等を発出するべきである。
年金担保貸付に関しては、制度が存在する以上「過去に年金担保貸付等を利用するとともに生活保護を受給していたことがある者が再度借り入れをし、保護申請を行う」ということが起きてしまう。その際に、もちろん、急迫状況等への留保はあるものの「資産活用の要件を満たさない」という解釈は、憲法25条で規定する「生存権」の観点からも厳しいものなのではないか。生活保護の適用もしくは、年金担保貸付の制度の改正が求められるものである。
5.扶養義務の取扱いについて
生活保護制度において、民法に定める扶養義務者による扶養は保護の要件ではなく、「保護に優先して行われるもの」(法第4条第2項)とされている。また、要保護者からの聞き取りなどによって把握された扶養義務者については、局長通知第5‐2に定める方法で扶養能力の調査をすることとされており、保護の実施機関の管外に対象者が居住する場合には書面により紹介することとされている。さらに、生活保護法第24条第8項は、扶養義務を履行していないと認められる者に対して、保護の開始の決定に際し厚生労働省令で定められた事項を通知することと定めている。
扶養調査については、局長通知第5‐2‐(2)‐アのただし書きにより、「直接照会することが真に適当でないと認められる場合」には他の手段によって照会をすることとされているほか、課長通知問5‐2により、扶養義務の履行が期待できない者や扶養を求めることにより要保護者の自立を阻害することになると認められる者については、その扶養義務の程度によって、局長通知第5‐2‐2‐(2)‐アのただし書きにいう「直接照会することが真に適当でないと認められる場合」もしくは扶養の可能性が期待できないものとして取り扱うこととされている。また、生活保護法施行規則第2条は、生活保護法第24条第8項に定める通知を保護の実施機関が行う上での条件を定めている。
しかしながら、このように扶養照会や扶養義務者への通知に条件を定めているとはいえ、生活保護制度の申請に際して扶養照会が行われる可能性があることによって、生活保護制度の利用をためらう生活困窮者が弊法人を含む支援団体にたびたび訪れており、潜在的には、このような生活困窮者の数は相当数にのぼるとみられる。生活保護制度を利用可能な者全体に対する実際に利用している者の割合(いわゆる保護の補足率)について、正確に把握することは困難であるものの、制度が利用できるにもかかわらず利用に至っていないとみられる者が相当の数いることは周知の事実である。その主な要因の1つは、扶養照会がなされる可能性があることにあると考えられる。このことは、生活保護法第24条第8項の存在によって、要保護者の申請の権利を実質的に制限することとなりかねない。
そもそも、民法によって規定される扶養義務者による扶養の義務は、年金制度などと著しく性質を異にするものであり、生活保護に優先して活用されるべきものとされるべきではない。また、扶養照会が行われるということは、申請者ないしは被保護者の情報を、本人の意に反して他人に提供することであり、生活保護を利用するためにこれを強要されるべきではない。以上の点を踏まえ、次の通り要望する。
第一に、生活保護法第4条第2項を「他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」とするとともに、第24条第8項を削除し、関連する法律の条文、政令、省令、通知等を改正もしくは改訂すること。
第二に、仮にこれが実現しない場合であっても、申請者が、扶養照会がなされることについて同意をしない場合には扶養照会がなされないよう、生活保護法施行規則第2条1項に「申請者が、法第24条第8項による通知が、保護の実施機関によってなされることに同意をしている場合」と追加すること。いうまでもなく、この同意が得られないことによって保護が却下されることのないようにするべきである。
※現時点(2018年3月6日時点)で、多くの自治体では特段の事情がなければ扶養照会等をおこなうほか、その特段の事情とされているDV等(配偶者や家族からの暴力)を申請者訴えた場合でも、その判断については各自治体において異なり、実際には、「扶養照会をする」といった説明がなされることが多い。現実には扶養照会を控えていたとしても、扶養照会の実施を示唆することは申請者の申請の意思をくじくことであり、申請権を実質的に侵害することになる可能性がある。保護申請がなされたあと、もしくは保護決定後にも扶養照会等をおこなうことは可能であり、申請者と丁寧に相談しながら個別に判断していくべきである。この点については特記したい。
6.住宅扶助について
6-1.住宅扶助の特別基準額について
生活保護の住宅扶助にかんして、『局長通知』第7の4-(1)-(オ)は、特別基準額について定めている。これは生活保護法第9条の必要即応の原則に対応する運用であり、被保護者の健康で文化的な最低限度の生活の保障のためにきわめて重要である。
ただし、現実にはこの特別基準額が適用されたとしても、健康で文化的な最低限度の生活が保障されない場合がある。とくに、障害を抱える被保護者で、都市部にて居宅生活を送る場合、現行の特別基準額で住まいを探すことは困難であり、このことによって居宅への移行が遅れるケースがある。以上の点を踏まえて、次の通り要望する。
各地域の賃料の実態を調査し、この調査結果を踏まえて『局長通知』第7の4-(1)-(オ)に定める住宅扶助の特別基準額を改訂すること。
6-2.転居のための一時扶助について
『局長通知』の第7の4の(1)のカにおいて、特別基準額の3を乗じて得た額の範囲内で転居に際する一時金を支給することができると定められている。また、『課長通知』問7‐30において、この支給が認められる条件について定められており、このなかに、「実施機関の指導に基づき、現在支払われている家賃又は間代よりも低額な住居に転居する場合」というものがある。
2015年に住宅扶助費の見直しがなされ、一部で住宅扶助基準の引き下げがなされた。これに伴い、それ以前から生活保護を利用し続けていた者で、居住する住宅の家賃が住宅扶助基準を上回ることになってしまったため、転宅を指導される者がいる。他の福祉事務所の管轄地域にあり、当該地域の住宅扶助基準以内の家賃の物件への転宅をするにあたり、転居に際する一時金を申請したにもかかわらず、現在の住居と同額の家賃であることをもって、申請が却下されるという事態が生じている。以上の点を踏まえ、次の通り要望する。
『課長通知』問7‐30の2を「実施機関の指導に基づき、現在支払われている家賃又は間代と同額か、それよりも低額な住居に転宅する場合」と変更すること。
6-3.契約更新等に要する費用について
『局長通知』第7の4の(1)のクにより、被保護者が居住する借家等の契約更新等に際し、オに定める特別基準の範囲内において必要な額を認定しても差し支えないことが定められている。しかしながら、個別の事情により契約更新等に要する費用がオに定める特別基準額を上回ることがあり、契約更新等に要する費用の一部を経常的一般生活費等から補てんせざるを得ない場合がある。このことは、被保護者が生活保護制度によって保障されるべき健康的で文化的な最低限度の生活が守られていないことを意味している。以上の点を踏まえ、次の通り要望する。
契約更新等に要する費用について、その実態を把握するとともに、被保護者が更新料を支払うことによってその健康で文化的な最低限度の生活が損なわれることのないよう、『局長通知』第7の4の(1)のクを改訂すること。
※現時点(2018年3月6日)において、例えば、都内などの家賃水準が高い地域で、障害等を抱える被保護者で転宅等の必要に迫られた場合、特別基準額で入居できる物件は非常に稀である。また、その場合の一時金に関しても基準額内でおさまることは稀である。特に、身体障害等の住居に一定の条件を必要とする被保護者に関しては合理的な配慮が求められる。
実施機関の指導に基づき転居する際の家賃に関しては、「実施機関の指導に基づき、現在支払われている家賃又は間代よりも低額な住居に転居する場合」が障壁となる。即座に変えられる文言であるので早期に対応をお願いしたい。
更新料に関しては、アパート契約の際に連帯保証人をたてることができず保証会社等を利用する被保護者が増加していることもあり、これまでの基準額では更新にかかるすべての費用がまかなえないことが多く発生している。保証料等が発生することをふまえた基準額の増額をはかるべきである。
7.収入認定について
7-1.就労収入の認定における基礎控除について
『次官通知』第8-3-(4)において、勤労収入・農業収入・農業以外の事業収入を得ている者について、勤労に伴う必要経費として基礎控除額が定められている。この基礎控除は、生活保護制度の必要即応の原則に則るものとして導入され、その後就労・自立のインセンティブを強化するためとして控除の見直しがなされてきた。しかしながら、依然として、勤労収入等が収入認定されることへの強い不満を抱え、就労意欲をむしろ失うという事態が生じている。無論、「自立」とは就労による自立のみを指すものではないが、現行の収入認定と基礎控除のあり方によって、一部の被保護者の就労意欲を低下させていることもまた事実である。これは、生活保護制度の趣旨に鑑みて、是正されるべき事態であると考えられる。以上の点を踏まえ、次の通り要望する。
『次官通知』第8の3の(4)別表に定める基礎控除について、被保護者の就労意欲を減じることのないよう、引き続き社会保障審議会生活保護基準部会で見直しを検討すること。
7-2.仕送り、贈与等による収入の認定について
厚生労働省は、『次官通知』第8-3-(2)-イ-(イ)は「他からの仕送り、贈与等による主食、野菜又は魚介は、その仕送り、贈与等を受けた量について、農業収入又は農業以外の事業収入の認定の例により金銭に換算した額を認定すること」と定めている。他方で、『次官通知』第8-3によれば、「社会事業団体その他(地方公共団体及びその長を除く。)から被保護者に対して臨時的に恵与された慈善的性質を有する金銭であって、社会通念上収入として認定するものが適当でないもの」は収入として認定しないこととされているが、「仕送り、贈与等による主食、野菜又は魚介」については言及されていない。
しかしながら、近年、民間の支援団体等による食糧支援が広まっている状況において、これらの団体等から受け取った食糧を収入として認定するか否かの判断が福祉事務所によって異なるという事態が生じている。以上の点を踏まえて、次の通り要望する。
社会事業団体その他(地方公共団体及びその長を除く。)から被保護者に対して臨時的に恵与された慈善的性質を有する食糧および食料であって、社会通念上収入として認定するものが適当でないものについても、収入として認定しないように、『次官通知』を改訂し、関係機関に周知徹底すること。
※現時点(2018年3月6日)において、フードバンク等の食糧支援団体や、子ども食堂などの活動は全国的に拡大し、多くの地域で活動がおこなわれている。地域によって、団体等によって活動内容が異なるが、こういった支援(時に互助的な仕組み)を利用することはある種、孤立しがちな被保護者が地域のなかで「つながり」を作るための一つのきっかけとして、食糧の提供のみならず大きな意味をもつ可能性もある。それを、仮に収入認定という形で狭めてしまうのであれば、地域福祉を拡充する観点からも非常に問題がある。各自治体においては、個別にフードバンク団体等と協議するなどし、被保護者の不利益とならない形での民間の支援活動の利用について検討していくことが求められる。政府もそういった後押しをするための通知等の改訂や予算措置等の対応をおこなうべきである。
8.法第78条の適用について
生活保護法の制定を主導した、当時の厚生省社会局保護課長である小山進次郎の著作『生活保護法の解釈と運用』は生活保護法のコンメンタールとしての役割をもつとされているが、ここで、法第78条は収入の申告がなされなかった時などに一律の適用がなされるべきではない性質のものとされている。しかしながら、厚生労働省社会・援護局による通知(平成24年7月23日社援保発0723「生活保護費の費用返還及び費用徴収決定の取扱いについて」)は法第63条と法第78条の適用の原則や、「生活保護第61条に基づく収入の申告について(確認)」という書面を福祉事務所と被保護者との間で取り交わすべきことを示している。
このような運用の変化により、上記書面に署名したことをもってして、収入の申告がなされなかった場合に法第78条が適用されうるようになった。しかしながら、とくに申請時点やその直後は、申請者自身が心身ともに健康的な状態にいるとは限らず、かような書面の意味を十分に理解できる状況にいない可能性もある。そのような状況のなかで書面が交わされた場合、それをもってして機械的に被保護者が収入申告の義務と法78条の趣旨について理解したとみなし、法第78条を適用することは不適切である。
また、「被保護者に不当に受給しようとする意思がなかったことが立証される場合で、保護の実施機関への届出又は申告をすみやかに行わなかったことについてやむを得ない理由が認められるときや、保護の実施機関及び被保護者が予想しなかったような収入があったことが事後になって判明したとき等は法第63条の適用が妥当である」とし、同通知が定める基準に該当するものについて法第78条を適用するとすることは、極端に第63条の適用範囲を狭め、第78条の適用範囲を広めるものであり、法の立法趣旨にそぐわないものである。以上の点を踏まえ、次の通り要望する。
第一に、法第78条が適用されるのは、被保護者に不当に受給しようとする意思があったことが立証される場合に限ることとし、関係機関への指導を徹底すること。
第二に、同通知別添2の書面に被保護者の署名がなされていることをもってして機械的にこれが立証されるべきではないこととし、関係機関への指導を徹底すること。
※現時点(2018年3月6日)において、多くの自治体で申請時に上記署名を求める運用をおこなっているが、弊法人スタッフが申請に同行した際など、すべての場合において必ずしも丁寧な説明や同意の確認がおこなわれていたとは言い難い。適切な説明のないままに署名を求める事案も起きている。同行者等がいない場合などは、そういった第三者の目もなく実態はつかめないのが実情である。事実、申請時には多くの書類の提出や、生活歴、職歴、健康状態等のさまざまなヒアリングがなされることもあり、被保護者の状況によっては、たとえ適切な説明を受けていたとしてもきちんと解することができない場合も想定される。署名を求める行為自体が不当であると考える。昨今の生活保護の運用の改正(法改正)は過度に被保護者に対して厳しいものであり、また、現場の各自治体のケースワーカー等にも被保護者を支援ではなく監視(摘発)することを求めるものに変質しているような印象すら受ける。上記改善点等を早期に適応することを求める。
9.就労指導のあり方について
近年、厚生労働省は、平成25年5月16日社援発0516第18号「就労可能な被保護者の就労・自立支援の基本方針について」および平成27年3月31日社援保発0331第22号「就労支援促進計画の策定について」(第2次改正 平成29年3月22日社援保発0322第1号)を通して、稼働能力を有する被保護者に対する就労支援の強化をしている。
前者の通知においては、保護開始直後の稼働能力を有する被保護者について活動期間を定めて集中的な就労支援をすることとされ、後者の通知においては、事業対象者数や達成者数等9つの項目について指標および数値目標を各自治体で設定し、その達成状況等を踏まえて評価を行うこととされている。
しかしながら、弊法人を含む支援団体には、本人の稼働能力に明らかに見合っていない就労指導を受けることにより、精神的苦痛を受けていると訴える被保護者からの相談がたびたび寄せられている。また、「稼働能力がある」と見なされる場合であっても、その具体的な状況は千差万別である。生活保護法の趣旨に照らせば、それらの固有の状況に応じたケースワークがなされるべきである。したがって、就労によって収入が増えるかどうか、そのことによって生活保護が廃止になるかどうかといった事柄は、あらかじめ予測できる性質のものでもなければ、設定された水準に合わせて行うものでもない。にもかかわらず、就労支援にかかわる事業の対象者数や、事業により増収した者の数、生活保護の廃止の数を自治体で定めるように――それが技術的助言であったとしても――求めることは、生活保護制度の趣旨に反することである。以上のことを踏まえて、次の通り要望する。
第一に、被保護者の稼働能力について、個別の事情を踏まえた判断を行い、就労指導はそれに基づいて行われるよう、また、被保護者に対して精神的苦痛を与えるような就労指導が行われることのないよう、関係機関に指導を徹底すること。
第二に、就労支援促進計画にかんして、数値目標の設定をただちに撤廃させること。
※現時点(2018年3月6日)において、「就労可能な被保護者の就労・自立支援の基本方針について」「就労支援促進計画の策定について」により、多くの自治体において「就労自立」のみが「自立」ととらえられる風潮が拡大してしまったと言えよう。事実、多くの自治体において就労指導や、就労に関わる相談員等を設置しての支援など、就労指導に力をいれている。しかし、当然ながら、就労は被保護者本人の努力のみでなしえるものではなく、地域での雇用先の掘り起こしや雇用の創出などの視点も必要であろう。ハローワーク等との連携などさまざまな展開はあるものの、実際に就労ができる可能性は、被保護者の努力の範疇を超えた様々な要因の影響を受けるものであり、数値目標等を設定すること、被保護者に就労自立へのプレッシャーをかけることは、生活保護法の理念に馴染まない。早期の撤廃を求める。
10.後発医薬品の取扱いについて
厚生労働省は、平成25年5月16日社援保発0516第1号「生活保護の医療扶助における後発医薬品に関する取扱いについて」(第3次改正 平成29年3月31日社援保発0331第4号)により、一部の場合を除いて、生活保護制度においては「後発医薬品を原則として使用する」こととし、さらに、被保護者が「先発医薬品を希望する理由に妥当性がないと判断される場合には、服薬指導を含む健康管理指導の対象とすること」としている。
後発医薬品の利用促進が一般に、つまり生活保護を利用していない者に対しても行われていることは事実であるが、一方で、生活保護を利用している被保護者に対して、一般と異なり、後発医薬品の利用を原則として強いることは、被保護者に対する明らかな差別である。なお、広く一般に利用の促進をすることと、被保護者の保護の決定・変更の権限を有する福祉事務所ないし現業員が被保護者に対して「原則」として使用を求めることは、その強制性において大きく異なるものである。以上の点を踏まえて、次の通り要望する。
医療扶助において、後発医薬品の使用を原則とする運用をただちに撤回し、関連する通知等を改訂すること。
※現時点(2018年3月6日)において、後発医薬品の仕様をすすめる運用がなされているが、原則化することには大きな懸念がある。日本の社会保障、特に医療分野の特徴はフリーアクセスであると言える。もちろん、被保護者の場合は指定医療機関での受診となり、治療材料等の一部制限はあるものの、多くの場合で、被保護者も被保護者でない人と同等の治療等を受けることができる仕組みになっている。後発医薬品の原則化は、医療保険加入者には課せられているものではなく、あくまで被保護者のみを対象としており、医療への制限として社会的な差別ではないかという懸念がある。今国会で成立した改正生活保護法においても後発医薬品の原則化が明文化されたが、以上に挙げた理由から早期の改正を求める。
11.窓口における正確かつ適切な制度の説明について
11-1.保護の申請の取扱いおよび、申請時における制度の説明について
生活保護を申請することは、法律によって国民に保障された権利であり、これを侵害することのないよう、これまでにも厚生労働省はたびたび関係機関に通知等によって指導をしてきた。にもかかわらず、依然として各地の福祉事務所で生活保護の申請を受理することそのものを拒否されたという事例が後を絶たない。例を挙げれば、「家がなければ生活保護は受けられない」「持ち家のある人は生活保護を使えない」「働ける年齢なので生活保護は使えない」などと言われ、追い返されたという事例が弊法人にも寄せられている。いうまでもなく、これらは生活保護制度についての誤った説明であり、それにより保護を申請する権利を侵害する行為である。以上の点を踏まえ、次の通り要望する。
生活保護についての申請もしくは相談に訪れた者に対して、不実の説明を行うことによって、保護を申請する権利を侵害することのないよう、関係機関に指導を徹底すること。
11-2.保護の申請から保護の要否等の決定までの期間について
生活保護法第24条第5項は「保護の要否、種類、程度及び方法」についての通知は、特別な理由がある場合を除いて、「申請のあつた日から14日以内にしなければならない」としている。また、第24条第6項は、申請のあつた日から14日以内に通知がなされなかった場合には、その理由を明示しなければならないとしている。
しかしながら、一部の福祉事務所において、生活保護の申請もしくは相談を行った際に、特別の理由があるかどうかの確認もないままに、「30日以内に保護の要否等を決定する」と口頭で説明したり、同じ旨の書類を掲示するなどの行為が確認されている。以上のことを踏まえて、次の通り要望する。
保護の申請から保護の要否等の決定までの期間について、保護の申請もしくは相談に来たものに対して、適切な説明を行い、また適正な実施を行うよう、関係機関に指導を徹底すること。
11-3.移送費について
生活保護制度においては、「医療扶助実施方式」により、「患者が受診する場合等の患者自身に係る移送費用、患者移送のために真にやむを得ない事情による付添人を必要とするときの付添人の移送費用、医師の往診等に伴う費用等であった、患者の傷病等の状態に応じ、最も経済的な方法及び経路により移送を行ったものについて」認められている。
しかしながら、弊法人を含む支援団体には、通院等に費用がかかることをケースワーカーが把握しているにもかかわらず、医療扶助による移送費用が支給されないことによって、生活水準に悪影響を受けているとの訴えがしばしば寄せられている。以上の点を踏まえ、次の通り要望する。
医療扶助を受ける被保護者に対して、移送費用の支給がなされうることについて適切な説明を行うとともに、被保護者が健康的で文化的な最低限度の生活を下回る生活を送ることを強いられることのないよう、柔軟に移送費の支給を行うこと。
※現時点(2018年3月6日)において、弊法人を含む支援団体には、生活保護の申請時ないし生活保護を利用中に、実施機関から不当な、あるいは不正確な説明を受けたことにより損害を被ったとする相談が多く寄せられる。すでに政府としても各自治体に多くの通知等を発出しているが、あらためて不当な窓口での対応、ケースワーカーの不正確な説明等を根絶するためにご尽力を願いたい。
12.保護費の過誤支給について
12-1.過誤支給の実態把握・公表と防止について
生活保護費の過誤支給、とくに過少支給は被保護者にとって、その間厚生労働大臣が定める保護の基準を下回る程度での生活を余儀なくされることであり、きわめて重大な問題である。しかしながら、その全国規模での実態について、これまで明らかにされることはなかった。以上の点を踏まえ、次の通り要望する。
生活保護制度における過誤支給の実態について調査し、把握された情報を公開し、過誤支給を防止する対策を行うこと。
12-2.過誤支給があった際の返還の求めおよび遡及支給について
保護費の過大支給があった場合、現状では過大に支給された分について一律に全額の返還が求められることがしばしば生じている。しかしながら、一律に過大支給分を被保護者に返還させることは、そのことにより被保護者に保護の基準を下回る程度での生活を強いることにつながりかねない。また、現状では保護の遡及変更について、『問答集』問13-2で3か月程度とすることとされている。しかしながら、保護費の過少支給が行われた場合、その期間に被保護者は保護の基準を下回る程度での生活を余儀なくされていたのであり、不足していた保護費については、最低限度の生活水準を回復し、被保護者の自立のために資されるべきであって、遡及変更がなされる期間は一律に定められるべきではない。以上の点を踏まえ、次の通り要望する。
保護費の過誤支給があった場合には、被保護者の最低生活の維持および自立のために、一律に返還を求めたり、遡及支給を限定することのないよう、柔軟な運用がなされるべきこと。また、被保護者の自立の助長につながるよう、必要に応じて自立更生計画を策定することについて、関係機関に対して指導を徹底すること。
※現時点(2018年3月6日)において、生活保護制度に基づき支給される費用(以下、保護費とする)が、なんらかの事情によって、本来支給されるべきものに比べて、過大に、もしくは過少に支給される事態(以下、過誤支給とする)が各地で生じている。過少支給に関しては、最低生活費を割り込む恐れもあることから非常に深刻な問題であり、仮に起きてしまったとしても事後には、特に「自立更生計画の策定」などにより、より柔軟に被保護者の生活改善や自立の助長につながるための方法を模索することで解決を図るべきである。
13.福祉事務所の体制の強化について
13-1.現業員の増員、資質向上、実態調査について
厚生労働省は、「福祉事務所現況調査」を平成16年、21年、28年に実施している。この間に、生活保護担当現業員の配置状況や資格の取得状況などについて、改善がみられるものの、未だに現業員の配置人員数が標準数に達していなかったり、資格保有者の割合が低くとどまっているなどの課題がある。加えて、この調査では研修の実施頻度など、現業員が保護を適正に実施するうえで人員や資格の有無等に限られない問題について明らかにできていない。以上の点を踏まえて、次の通り要望する。
第一に、各福祉事務所で生活保護を担当する現業員を増員すること。また、すべての福祉事務所で、被保護者が不利益を被ることのないよう、保護の適切な運用がなされるための研修等を義務付けること。
第二に、福祉事務所で現業員らが直面している課題について、より多角的に明らかにできるよう、実態調査を実施すること。
13-2.制度運用の改善のための方策
生活保護行政にかんしては、生活保護法第23条に基づく監査が行われているほか、社会福祉事業法第14条により福祉事務所には「指導監督を行う所員」(査察指導員)が置かれることとされている。昭和47年3月25日社監第23号「保護の実施機関における生活保護業務の自主的内部点検の実施について」で厚生労働省は、実施機関である福祉事務所に対して、業務の内部点検を行わせるとしている。
しかしながら、もとより査察指導員はあくまで福祉事務所の職員であり、厚生労働省が求める「点検」も「自主点検」である。厳正な点検とそれに基づく業務の改善が行われるためには、福祉事務所に所属しない者による、業務の点検がなされるべきである。以上の点を踏まえ、次の通り要望する。
生活保護制度にかんする福祉事務所の業務について、生活保護制度について熟知した法律家など、第三者による査察を受けることを福祉事務所に対して義務付けること。
※現時点(2018年3月6日)において、本要望書で言及した生活保護制度の課題のうち、とくにその運用における課題は、福祉事務所の現業員個人の資質や能力の問題のみに帰せられるべきものではない。むしろ、福祉事務所全体として、制度を適正に実施していくことが可能な状況に置かれていない可能性を考慮すべきである。事実、都市部などでは担当世帯数が標準数を大幅に超えてしまうことも珍しくはない。また、「自主点検」の問題は深刻である。事実、例えば小田原市などでは、「保護なめんな」と書かれたジャンパーを着て職員が10年以上も訪問調査等をおこなっていたことがあきらかになっている。第三者等が生活保護にかんする福祉事務所の業務について査察、指導等を行う仕組みを、モデル事業等を通じて開発していくべきである。
14.生活保護にかんする広報・啓発について
生活保護にかんしては、広く人びとに知れ渡る制度であるとともに、誤解や偏見の多い制度でもある。例えば、近年、マスメディア等で、生活保護制度における不正受給が取り上げられる一方で、その件数や不正受給額、実態などについて正確な情報が伝えられず、誤解を助長するような向きがみられる。非合法組織の資金調達のために制度を悪用するなどの悪質な不正受給に対してはむろん厳正な対処がなされるべきであるが、制度への信頼はむしろ、被保護者ではなく誤った情報を発信し、広める者によって大きく損なわれていると考えるべきである。また、例えば外国籍の者に対する保護の準用が違法であるなど、明らかに誤った情報が流布され、生活保護制度に対する信頼が損なわれるのみならず、民族や国籍に基づく差別と生活保護制度への非難とが同時に行われるような事態も生じている。以上の点を踏まえ、次の通り要望する。
生活保護制度を支えるすべての人びとに対し正しい知識を広めると同時に、誤った情報の拡散に対応することを通して、制度の信頼性を確保していくことに努めること。
※現時点(2018年3月6日)において、生活保護制度は権利として無差別平等に利用できる制度でありながら、実際は多くの人にとって利用しにくい制度、利用していることを他者に言いにくい、周囲に知られたくない制度となってしまっている。しかし、今後、高齢世帯の増加にともなう被保護世帯増が予測されるなかで、必要な人が利用しにくい制度になってしまっては言語道断である。「国民の理解を得るため」に制度を変えるのではなく、国民の理解を得るための広報・啓発に力を入れるべきである。
15.外国籍の者の保護について
外国籍の者に対する保護については、昭和29年社発第382号厚生省社会局長通知「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」及びその後のいくつかの通知、平成2年10月25日厚生省社会局保護課企画法令係長の口頭指示等により、入管法別表第2に掲げられた者(「永住者」、「定住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」)に限定して、「準用」という形で保護がおこなわれている。この「準用」により、いわゆる生活保護の「適用」とは異なり、例えば日本国籍の者が認められている「現在地保護(住所不定からの申請)」が認められていない、不服申し立ても認めないなど、多くの問題があることは明らかである。日本国内に居住する外国籍の者が増加する社会背景のなかで、この外国籍の者の保護にかんしても早急な対応が必要であることが明らかである。以上の点を踏まえ、次の通り要望する。
第一に外国籍の者の保護について「準用」ではなく生活保護法内での取り扱いとなるように関係する法改正、政省令等の改訂をおこなうこと。
第二に外国籍の者の保護について、在留資格の種類、有無にかかわらず生活保護法内での保護を認めること
第三に外国籍の者の実施責任について、入管法に基づく在留カード又は入管特例法に基づく特別永住者証明書に記載された住居地を基準として定めることとする運用を改め、在留カード等に記載された住居地以外においても、申請があった場合には当該地域の実施機関が実施責任を負うものとすべきであること。
第四に外国籍の者の保護にあたって、また申請時や被保護外国人の支援のために、各自治体が通訳等を設置するための予算措置をおこなうこと。
※現時点(2018年3月6日)において、外国籍の者の保護は「準用」という形で「永住者」、「定住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」に限定されておこなわれている。これについては上記要望内容にあるように生活保護法内での取り扱いを求めるが、一方で、さしあたっては、在留資格の種類、有無にかかわらず「準用」できる取り扱いにすべく通知等の改訂を求めたい。事実、例えば、緊急に医療が必要な場合の対応などは人道的観点からも早急に対応すべきであるほか、在留資格がない場合でも人身取引被害者保護の観点や、子どもの場合は児童福祉の観点からも、「準用」の対象を拡大することは急務である。
また、いわゆる「現在地保護」の取り扱いに関しては、DVや虐待被害などへの対応としても認めるべきである。また、「準用」という扱いであっても、不服申し立てを認めるなど、適正な生活保護制度の実施にむけた取り組みを怠るべきではない。
そして、国内に居住する外国籍の者が増加することが予想されるなかで、各自治体においては保護の申請や被保護外国人への支援のために通訳等の設置が必要となるところも多い。各自治体の財政的な負担とならないように予算措置をとるべきであると同時に、複数言語で「生活保護のしおり」を用意したりと、制度の仕組みや役割について適切に伝えられるように、各自治体の取り組みを後押しするべきである。
16.性的少数者への適切な対応について
生活保護制度を利用する者の中には性的少数者も少なからずいることは言うまでもない。
しかしながら、現在の生活保護制度においては、その法律や政令・省令等にも性的少数者に関する記述はなく、性的少数者が保護を利用するにあたって不合理な不利的を被るという事態が生じている。
具体的には、戸籍上は男性であるが、性自認が女性である者が現在地で保護を申請した際に、男性入居者のみが入居し、トイレや風呂場が共用となっている宿泊施設を案内され、精神的な苦痛を訴えたという事例があった。当初より被保護者が福祉事務所に自分の事情については伝えてあったことを踏まえれば、当該実施機関の対応は性的少数者に対する配慮が十分になされていなかったと言える。
このような事態は氷山の一角であり、性的少数者が生活保護を利用する上でさまざまな不利益を被っていることは想像に難くない。以上の点を踏まえ、次の通り要望する。
第一に、生活保護を利用する性的少数者がどのような配慮を必要としているのか、被保護者のプライバシーに十分配慮したうえで、その実態を調査すること。
第二に、性的少数者に関する研修をすべての福祉事務所で実施し、現業員および査察指導員の資質の向上に努めること。
第三に、実態調査を踏まえて、性的少数者に対する適切な対応がなされるよう、必要に応じて制度を改正すること。
※現時点(2018年3月6日)において、例えば、同性カップルが同じ住居で生活していて生活に困窮して生活保護の申請をした場合、生計を一にしていれば同じ世帯として生活保護を申請、受給できる。これらは、同性婚が制度的に認められていない現状においても、現実に即した合理的な生活保護上の扱いと言えよう。しかし、一方で、例えば、まだまだ社会のなかで性的少数者の存在が認知されていないこと、時に差別や偏見の眼差しにさらされやすい状況を鑑みた時に、初めて会う福祉事務所の窓口の相談員に性的少数者が相談のなかで、そういった自身の状況を説明をすることには大きなハードルが存在する。性的少数者への適切な対応はもとより、相談において心理的ハードルとならないような配慮は必要である。
また、保護施設や民間の無料低額宿泊所等のなかには、性的少数者にとっては入居(入所)することが住環境やプライバシーへの配慮などの観点から著しく困難なものも存在する。早急な対応を求める。
以上
上記、16の項目、45の点について、私たちは、早期に運用の改善、適正な実施がおこなわれることを強く願っています。
また、ここに記載されている以外にも、生活保護制度は多くの点において、被保護者の保護の達成と自立助長の観点から改善が必要です。
貴省には、社会保障審議会等の機会を活用しながら、より多くの学識経験者、実務家、当事者等の意見を聞き、より良い生活保護制度の運用のためにご尽力いただくことを、お願いしたいと思います。