貧困は、私たちのすぐ隣で起きています。社会問題を「知る」そして知ったあと「動く」方法を一緒に考えてみませんか? 2009年から東京都府中市で、生活相談・生活保護の申請同行・アパート入居のサポート・入居後のフォローまで地域に密着した支援活動を続けている「府中緊急派遣村」の松野哲二さんにメッセージをいただきました!
●松野さん
私自身が現在のような活動を始めた根本にあるのは、浅草に生まれ、民族差別や被差別部落の問題、隅田公園には労働者の生活協同体がまだあるなど、そういった下町一帯に差別が残る中で育っていくうちに、次第に「社会の中の差別」を問題として考えるようになっていったことがあります。
府中緊急派遣村をはじめた直接のきっかけは、2008年日比谷公園にて「年越し派遣村」が出来て、約500名の方が炊き出しや相談に訪れ、連日報道されたことを見知ったことでした。
この活動を遠くから見ていて、「この派遣村は現代の縮図だ」「この活動は地域で日常化することが大事なのではないか」と考え、有志が集まり「派遣村を地域で日常化する」ことを目的に「府中緊急派遣村」は始まりました。
同時に、あの年越し派遣村につながった約500名の方は、派遣切りなどで「普通に働いていたにも関わらず職を失った方」が多数を占めていたわけです。
これは貧困問題であると同時に労働問題ですし、それを解決するには労働組合がいっそう大事な時代になっていると考えています。
私たちのところへ相談にこられた方の中で、すぐに労働争議として団体交渉をおこなう必要がある方がおり、この時は「府中緊急派遣村労働組合」を立ち上げ交渉にのぞみました。
このように「貧困」と「労働」は表裏一体・密着した問題であるという自覚から、現在までこれらの活動を継続してきました。
現在の生活保護費の切り下げが検討されているとの報道に、少し前の選挙で与党はそのような方針はいっていなかったにも関わらず、進められていく政治状況に強い怒りを感じています。
特に今回の生活保護の切り下げは、子どものいる世帯への影響が大きく、ますます貧困の連鎖が進んでいくことを懸念しています。いってみれば日本社会の「底の基準」が切り下げられるわけですから、いっそう貧困が見えにくくなり、深化していくことが予想されます。
このような状況の中で〈もやい〉や私たちのおこなっている経済状況の底にいる人たちの相談をひとつひとつ受け、ひとつひとつ解決していくという活動がいっそう大事になっていくと考えます。今後も一緒に活動を続けていければと思います。