〈もやい〉の活動スペース「こもれび荘」では、定期的に展示会を開いています。過去には、紛争や闘病を経験したイラクの子ども達が描いた絵を展示したり、ホームレス問題に携わっている英国の画家ジェフ・リードさんによる似顔絵展を企画したり。一昨年の夏は、〈もやい〉
の歴史をふり返る、写真とメッセージの展示会が開催され、期間中に訪れた方や歴代関係者の皆さんが寄せ書きをしてくれました。
今年は1月末より、『坂本久治さん展』が開催中です(3月末の引っ越しまで展示中)。坂本さんは、長年に渡り〈もやい〉とご縁の深い方で、新宿に暮らしながら路上で絵を描いていました。土曜日のサロンに来ては、初めて来た人に「もやいはこういう団体なんだよ」と説明した
り、新作の絵を見せたりしていました。数年前に坂本さんは亡くなりましたが、今回、遺された絵を展示させていただいています。
貧困問題の団体が、必ずしも交通アクセスのよくない事務所で開く、小さな展示会。そこには、どんな意味があるでしょうか。答えは人それぞれですが、私は「人との結びつきを五感で感じること」かなと考えています。
〈もやい〉に集まる人達は普段、手分けして相談に応じたり、コーヒー焙煎や交流の場を作ったりと、比較的こじんまりとした雰囲気の中で過ごしています。他方、貧困・格差について政策提言やメディア発信をおこなう過程で、あるいは問題の当事者として生活するなかで、批判や非難の矢面に立ったり、心無い言葉を投げかけられることもあります。
そのように自分が揺さぶられそうな時に、例えば、国内外で同様の問題に接している人達に思いをはせること、自分や周りの人たちの歩みを確かめること、今いる場所を支えてきた人々を記憶したり、つながりの継続性を感じることは、とても大切なのではないかと思います。そして、展示という「形あるもの」を通じて、そのための確かな空間が作れるのではないかと思うのです。
〈もやい〉の展示会は、どなたも歓迎です。まだの方は、交流の会が開かれている日に、ぜひ一度来てみてください。今回の展示に際しては正直、坂本さんから「勝手に絵を持ち出してー」と叱られるかなとも思いました。でも、生きていたら坂本さんはもっと多くの絵を描き、来る人達に見せていたと思います。皆さんが見に来てくれたら、喜ばれたのではないかなと思います。(松山晶:もやい理事)