認定NPO法人 自立生活サポートセンター・もやい

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もやいブログ

2014.9.7

政策提言・オピニオン

もやい生活相談データ分析報告書 簡易版(後編)

※PDF版ダウンロードはこちらから(pdf・別ウィンドウで開きます)

■前編はこちらから

1 相談者の概要

【1-1】男性86.3%、女性13.3%、その他の性別0.4%。
【1-2】平均年齢46.0 歳。男性46.5 歳、女性42.9 歳で女性がやや若い。

相談者の概要

【1-3】相談時点での居所は、安定している人29.9%、居候や施設居住者など不安定な人20.3%、居所を持たない人51.4%(うち野宿者37.2%)。
【1-4】世帯構成は、86.9%が単身世帯。
【1-5】相談時に生活保護を受給中の人13.4%。
【1-6】 過去に生活保護など公的支援を受けていたことがあるが相談時点ではそれが継続していない人34.2%。
【1-7】相談の結果、生活保護を申請した人は66.2%。うち、相談時に支援者が同行したケースは51.8%、申請後の居所はアパートが29.8%、ドヤ等が25.9%、民間宿泊施設が13.1%、ゲストハウスが10.5%。
【1-8】相談時点で仕事をしていた22.8%、うち日雇・都市雑業35.5%、パート・アルバイト25.8%、派遣・請負・契約20.7%。
【1-9】職種では、運輸・保安・建築26.4%、サービス業22.7%、都市雑業13.5%。相談時点でしていた仕事(現職)と、もっとも直前までしていた仕事(直前職)を比べると、現職ではより不安定な仕事が増えている。
【1-10】所持金は、1000 円未満42.6%。中央値は1800 円。ほとんどお金が尽きてから相談に来る人が過半数を占めている。
【1-11】疾病を訴えた人は78.5%で、健康状態が悪い人が多い。うち、身体的疾病50.2%、精神的疾病19.0%。
【1-12】もやいを知った経緯は、口コミ49.2%と約半数、メディアで知った26.9%。
【1-13】初回相談後、ふたたびもやいを相談に訪れている人は32.2%。
【1-14】相談がもっとも多かったのは、年越し派遣村実施後の2009 年で、その後は減少傾向にある。

2 年齢構成と世帯構成

【2-1】年齢が高いほど居所なしの割合が高く、若年層の方が居所は安定しているが、ネットカフェ居住者などは若年層で多い。
【2-2】現職・直前職を見ると、年齢が高いほど都市雑業および自営業・正規雇用の割合が多く、若年層で派遣・アルバイトの割合が高い。これは、近年の若年層における非正規雇用の広がりが、生活困窮に直結することを示していると考えられるだろう。
【2-3】年齢層が高くなるほど身体的疾病がある人が増え、若い年齢層では精神的疾病を持つ人の割合が高い。

3 生活相談後の「制度」利用申請とその後の居所

※ここでいう制度とは、ホームレス状態にある人が利用できる制度の代表格である「生活保護制度」と「自立支援事業」のことを指す(以下まとめて「制度」と記す)。

【3-1】相談者のうち15.0%は生活保護制度や自立支援事業の制度を利用していながらも、もやいに相談に訪れている。
【3-2】もやい相談後に相談者が利用申請する制度は、圧倒的に生活保護制度の割合が高い。
【3-3】2009 年、2010 年にもやいに相談に来た人は、制度の利用申請に至る割合が高い。
【3-4】女性に比べ男性の方が制度の利用申請に至る割合が高い。
【3-5】年齢が上がるにつれて制度の利用申請に至る割合が高くなるが、65 歳以降になると低くなる。
【3-6】精神的な疾病・障害を抱えている人に比べ、そうした疾病・障害がない人の方が制度の利用申請に至る割合が高い。
【3-7】過去に制度の利用経験のある人の方が制度の利用申請に至る割合が高い。
【3-8】相談時に居所がない人のほうが制度の利用申請に至る割合が高い。
【3-9】現職のない人の方がある人よりも制度の利用申請に至る割合が高い
【3-10】同行支援者がいる場合、制度の申請に至る割合はほぼ100%である。
【3-11】生活保護利用申請後の居所は「アパート」の割合が33.9%と最も高く、次いで「ドヤ」が28.5%、「民間宿泊所」が13.2%となっている。
【3-12】生活保護利用申請後の居所は、2008 年までは「アパート」が最も多かったが、2009 年以降は「ドヤ」、
「民間宿泊所」、「ネットカフェ・ゲストハウス・カプセルホテル」が一定程度の割合を占めるようになっている。2011 年以降は特に「民間宿泊所」が増加している。その理由は2008 年までの相談者が、相談時点で「居宅」にいる割合が高かったためである。
【3-13】男性は生活保護申請後、「ドヤ」「アパート」など多様な居所で生活保護を受給しているのに対して、女性は「アパート」で生活保護を受給している割合が高い。その理由は女性の方が相談時点で「居宅」にいる割合が高いためである。
【3-14】相談時の居所が「居宅」・「不安定住居」の者は、生活保護の利用申請後も概ね同じ形態の居所で生活保護を受け始めるのに対して、「居所なし」の者は居所にばらつきがみられる。この結果は、【3-2】【3-3】の結果の解釈を裏付けるものである。

4 公的支援利用経験者/未経験者の実態

【4-1】もやいに相談に来る人の中で公式支援を利用したことがある、もしくは利用している人は男性で約3割、女性で1 割未満と男女差が大きい。
【4-2】相談時に路上生活をしていた人では公的支援利用経験者が約半数に及ぶが、不安定な居所と考えられ
る「知人宅」、「ネットカフェ・サウナ・喫茶店」、「ゲストハウス」で生活している人では公的支援利用経験者は2~3 割と低い。
【4-3】過去に生活保護を受けていた人が語る生活保護が継続しなかった理由で最も多いのは「失踪・辞退」であり、施設・寮への入居を半強制する制度運用が反映されていると考えられる。また、その環境が社会復帰につながりにくいことが示唆される。
【4-4】自立支援事が継続しなかった理由も「失踪・辞退」が最も多く、この事業の目的である「就職」は3割にとどまる。
【4-5】公的支援未経験者は公的支援経験者と比べて若年層が多い、居所が安定している、前職が正社員もしくは自営業・経営役員が若干多い、精神に不調をきたしている人が若干多い、といった特徴が見られた。
【4-6】もやいに相談に来る前に福祉事務所に相談に行った人は3 割程度いるが、そのうち7 割以上が制度利用に至らず福祉事務所を帰らされている。

5 就労の形態と収入

【5-1】現職の有無は、男性は78.8%、女性は67.3%の人が無職の状態。2009 年以降、無職の人の割合が増加し、80%前後で高止まりしている。現在の公的支援利用経験別では、公的支援の利用がない人では4.5 人に一人、生活保護利用者では9 人に一人、自立支援事業利用者では2 人に一人が有職。
【5-2】現職の就労形態は、不明が多く、データが少ない。男性では日雇い・都市雑業(41.6%)、女性ではアルバイト・パート(49.2%)が最多。若いほど派遣・契約・請負が、高齢になるほど日雇い・都市雑業
の割合が多い(グラフは、2-2 年齢階層と現職の就業形態(図4-1-14)参照)。2010 年以前は日雇い・都市雑業が最多であったが、近年、アルバイト・パートの相談者が増加し、2011 年では最多。
【5-3】現職の詳細も不明が多く、データが少ない。高齢になるほど都市雑業系や建設系が増える。現在生活保護を利用している人のうち最多は清掃業(25%)、自立支援事業では運送系(22.2%)。
【5-4】ここでの「直前職」は、現在無職の人の直近の職業と、現在就労している人の現職を合わせたものだが、その就労形態は不明が多くデータが少ない。基本的に現職の就労形態と同じ傾向だが、現職ありの人は、現在無職の人の直前職より、都市雑業やパート・アルバイトが多い。
【5-5】直前職の詳細も、不明の人が多い。現在無職の人の直前職は建設系(28.8%)、現職のある人の現職では販売・サービス系、運送系、事務系が12~3%で並ぶ。現在公的支援を受けていない人の「直前職」で最多は建設系(24.7%)で、生活保護利用中では販売・サービス系(17.5%)、自立支援事業利用中では運送系(24.1%)が最多。
【5-6】収入は、日給や時給で答えていた場合は月給(8 時間/日、20 日/月)に換算したため、実際より多くなっている可能性がある。居所区分別では、最も低いのは「居宅なし」だが、安定居宅にいる人よりも、
不安定居住の人のほうが収入が多い。また、現在公的支援を利用してない人は、生活保護を利用している人と同程度の収入に留まっている。

6 疾病の訴えの有無と疾病の種類

【6-1】相談者のうち、78.5%の人がなんらかの疾病を訴えている。そのうち、身体的疾病を訴える人が50.2%、精神的疾病は19.0%であったグラフは1-11 疾病(図2-4-1)を参照)。
【6-2】性別でみると、男性は全体と同様に身体的疾病を訴える人が精神的疾病を訴える人よりも多かったが、女性のみをみた場合は、精神的疾病を訴える人のほうが身体的疾病を訴える人よりも多いことに特徴がみられた(グラフは8-2 性別と疾病(図11-4)を参照)。(
【6-3】年齢階層別にみると、年齢階層が下がるにつれて精神的疾病を訴える人が多く、年齢階層が上がるにつれて身体的疾病を訴える人が多い。
【6-3】居所区分でみると、安定的と思われる居所に住んでいる人ほど、疾病について訴える人の割合が大きくなっている。
【6-4】【6-3】について、より詳細な居所区分でみた場合、実家・家族宅とゲストハウスに暮らす人たちで疾病について訴える人の割合が大きい。また、実家・家族宅とゲストハウスで暮らす人たちは精神的疾病を訴える人の割合が大きいことにも特徴がある。とくに、野宿、ネットカフェ・サウナ・喫茶店、施設・寮・飯場に暮らす人々のあいだでは、精神的疾病を訴える方が3割を下回っている。住環境や人間関係が精神的不調につながっていることが推測される。なお、寮・飯場、ホテル・ドヤ、知人宅に暮らす人たちについてみると、身体的疾病を訴える人の割合が大きかった。
【6-5】もやいに相談に来た時期別では、2008 年と2011 年以降で精神的疾病を訴える人の割合が他の年代と比べてやや高い傾向にあり、2008 年から2010 年には身体的疾病を訴える人の割合が半数を超えていた。

7 複数回来初ケース

【7-1】1 回のみ相談に訪れる人が68.0%と過半数だが、2 回20.3%、3 回6.4%、4 回2.1%と、複数回相談にくる人も3 割程度いる。最終来所日までの日数の中央値は56 日。
【7-2】相談回数が多くなるほど、過去に公的支援を受けた経験の割合が高くなる。このことは、制度を利用するものの短期間で廃止を繰り返してしまうことの表れだとも考えることができる。

8 相談者の男女比較から見る女性相談の特徴

【8-1】男性は92.0%が単身世帯だが、女性は53.1%で、男性と比べて多様な世帯構成の人が相談に来ている。
【8-2】女性は男性と比べて健康状態が悪い人が多く(男性76.1%、女性93.0%)、なかでも精神的疾病を抱えるのは、女性がより多い(男性20.5%、女性52.2%)。
【8-3】女性は男性よりも一般住宅に住んでいる人が多く(男性24.3%、女性64.3%)、居所なしが少なく(男性57.6%、女性9.5%)、女性の居所はより安定している。
【8-4】相談時点で仕事を持っている人が多く(現職があるのは男性21.2%、女性32.7%)、その就労形態も、アルバイト・パートは男性21.0%、女性49.2%、日雇は男性42.6%、女性0.0%で、女性の方が安定している。
【8-5】所持金は、中央値が男性は1000 円、女性は2 万円で、女性はよりお金を持った状態で相談に来ていた。
【8-6】もやいに相談した結果、生活保護を申請することになるのは男性が多い(男性70.2%、女性38.0%)。
【8-7】以上から、女性の場合には、男性より生活が安定した層が相談に訪れていることが推測される。ここから、生活に困窮することを女性は男性より深刻にとらえ、早くからリスクに備えて行動していることがうかがわれる。また、男性の相談が生活保護申請をすることで一定の解決がはかれる経済的なものが多いのに対して、女性は生活保護申請では解決されえない家族関係や暴力などの問題を抱えており、夫の扶養のもとにあって独立して世帯を営むことすら難しい、見えにくい女性の貧困のあり方を示しているとも考えられる。

【1-3】居所(図2-1-4)

図2-1-4

【1-8】就労形態(図2-3-2、図2-3-4)

図2-3-2図2-3-4

【1-9】職種(図2-3-3、図2-3-5)

図2-3-3図2-3-5

【1-10】所持金(図2-3-7)

図2-3-7

【1-11】疾病(図2-4-1)

図2-4-1

【1-12】もやいを知った経緯(図2-5-14)

図2-5-14

【1-14】相談年(図2-5-16)

図2-5-16

【2-1】年齢階層と居所(図4-1-3a)

図4-1-3a

【2-2】年齢階層と現職の就業形態(図4-1-14)

図4-1-14

【3-3】相談者の初回相談年と制度利用申請(図5-2-1)

図5-2-1

【3-7】過去の公的制度の利用の有無と制度利用申請(図5-2-2-4)

図5-2-2-4

【3-12】初回相談年と相談者の居所(図5-3-2)

図5-3-2

【4-6】 もやいに相談する前に福祉事務所を訪れた際の対応(表6-3-6)

図6-3-6

【5-1】就労の有無(来所年別)(図7-1-3)

図7-1-3

【5-4】直前職の就労形態(現職の有無別)(図7-4-1)

図7-4-1

【5-5】直前職の詳細の上位5職種(現在の公的支援の経験別)(図7-5-7b)

図7-5-7b

【5-6】収入分布(現在の公的支援の経験別)(図7-6-7b)

図7-6-7b

【6-3】年代と疾病(図4-1-17)

図4-1-17

【6-4】居所の種類と疾病の種類(図8-3-3)

図8-3-3

【6-5】初回相談時の年度と疾病(図8-14)

図8-14

【7-2】来初回数と過去の公的支援の経験(図9-1-8)

図9-1-8

【8-2】性別と疾病(図11-4)

図11-4

【8-3】性別と居所(図11-1-4)

図11-1-4

【8-4】性別と就労形態(図11-3-2)

図11-3-2

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