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はじめに
[1]本報告書は、NPO 法人自立生活センター・もやいを相談に訪れた人のケース記録を分析した『もやい生活相談データ分析報告書』の簡易版である。
[2]2004 年~2011 年7 月の2305 ケースが対象。
[3]丸山里美が代表の下記の研究費(2010 年度は立命館大学スタートアップ「不安定居住貧困層の女性の実証的把握に向けた予備研究」、2011 年~2013 年度はJSPS 科研費20584098「「新しい貧困」の実態についてのジェンダー分析」)を利用。
[4]もやい生活相談データ分析プロジェクトが分析・執筆を行った。メンバーは、丸山里美(立命館大学産業社会学部准教授)・上間愛(東京大学大学院人文社会系研究科修士・当時)・うてつあきこ(女性施設・生活支援員)・うらまつあやこ(もやい)・大西連(もやい)・小野寺みさき(早稲田大学教育・総合科学学術院助手)・柏崎彩花(自治体職員)・加藤茜(お茶の水女子大学文教育学部)・後藤広史(日本大学文理学部助教)・妻木進吾(龍谷大学経営学部准教授)。
[5]簡易版の内容は、『もやい生活相談データ分析報告書』をもとにしているが、グラフは新たに作成しなおしたものも含まれている。文中下線部に対応したグラフは末尾にまとめて記載した。
[6]報告書(全体版)に関する問い合わせは<もやい>まで。
簡易版のまとめ
[1]多様な貧困層が存在し、相談に訪れている。
【1-1】男性86.3%、女性13.3%、その他の性別0.4%。
【1-2】平均年齢46.0 歳。男性46.5 歳、女性42.9 歳で女性がやや若い。
【1-3】相談時点での居所は、安定している人29.9%、居候や施設居住者など不安定な人20.3%、居所を持たない人51.4%(うち野宿者37.2%)。
【1-3】居所(図2-1-4)
[2]不安定な就労/住まいの状況が生活困窮につながっている。
【2-1】年齢が高いほど居所なしの割合が高く、若年層の方が居所は安定しているが、ネットカフェ居住者などは若年層で多い。
【2-2】現職・直前職を見ると、年齢が高いほど都市雑業および自営業・正規雇用の割合が多く、若年層で派遣・アルバイトの割合が高い。これは、近年の若年層における非正規雇用の広がりが、生活困窮に直結することを示していると考えられるだろう。
【2-1】年齢階層と居所(図4-1-3a)
【2-2】年齢階層と現職の就業形態(図4-1-14)
[3]健康状態が悪い相談者が多い。
【1-11】疾病を訴えた人は78.5%で、身体的疾病50.2%、精神的疾病19.0%、両方は9.3%。
【6-3】年齢階層が下がるにつれて精神的疾病を訴える人が多く、年齢階層が上がるにつれて身体的疾患を訴える人が多い。
【8-2】女性は男性と比べて健康状態が悪い人が多く(男性76.1%、女性93.0%)、なかでも精神的疾病を抱えるのは、女性がより多い(男性20.5%、女性52.2%)。
【1-11】疾病(図2-4-1)
【6-3】年代と疾病(図4-1-17)
【8-2】性別と疾病(図11-4)
[4]公的支援につながっていない/つながっても上手くいかないことが多くみられる。
【1-6】過去に生活保護など公的支援を受けていたことがあるが、相談時点で継続していない人34.2%。
【4-3】過去に生活保護を受けていた人が語る生活保護が継続しなかった理由で最も多いのは「失踪・辞退」であり、施設・寮への入居を半強制する制度運用が反映されていると考えられる。また、その環境が社会復帰につながりにくいことが示唆される。
【7-1】相談回数が多くなるほど、過去に公的支援を受けた経験の割合が高くなる。このことは、制度を利用するものの短期間で廃止を繰り返してしまうことの表れだとも考えることができる。
【4-6】もやいに相談に来る前に福祉事務所に相談に行った人は3 割程度いるが、そのうち7 割以上が制度利用に至らず福祉事務所を帰らされている。