衆院選をむかえるすべての政党及び候補者のみなさまへ
私たちは、日本国内の貧困問題に取り組む団体として、生活に困窮された方が生活保護などの社会保障制度を利用するにあたっての相談・支援や、安定した「住まい」がない状態にある方がアパートを借りる際の連帯保証人の提供、サロンなどの「居場所作り」といった活動をおこなっています。
2001年の団体設立からこれまでに、のべ約3,000世帯のホームレス状態の方のアパート入居の際の連帯保証人や緊急連絡先を引き受け、また、生活にお困りの方から寄せられる面談・電話・メール等での相談は、年間4,000件近くにのぼります。
私たちは相談の現場において日夜、貧困の現状に直面し、まさに今、社会全体の底が抜けて、少しずつですが確実に、一人ひとりの「いのち」を守る前提や土台が崩れつつあるのを感じています。
実際に、厚労省国民生活基礎調査によれば、日本の相対的貧困率は15.6%、子どもの貧困率が13.9%(いずれも2015年)と、直近の数字では改善の兆しを見せてはいるものの、近年、日本で「貧困」は増加傾向にあることがわかります。
また、2013年8月より段階的に生活扶助基準(生活保護の生活費分)の引き下げが始まり、生活保護世帯の家計の平均6%がカットされました。しかも、子どものいる世帯ほど結果的に多く削減される計算方法がとられており、同年に成立した「子どもの貧困対策基本法」の理念と矛盾した施策となっています。
そして、2014年4月よりは、消費税が8%となり、低所得者、生活保護世帯の暮らしを圧迫しています。また、物価の上昇や円安の影響により、食料品や灯油代等の値上げも、喫緊の課題として家計を直撃しています。
政府は、2012年に成立した社会保障制度改革推進法に基づき、税と社会保障の一体改革を進め、消費増税をしてもその分、社会保障に充てていく、ということを内外に表明してきました。しかし、実際に、低所得者、生活保護世帯等には、どの程度の手当てがなされたのでしょうか。〈もやい〉に相談を寄せられる方達の生活の実態を見ていると、きちんと再分配がなされているとは言えない状況です。
私たちは、持続可能な社会保障制度を求めています。そして、そういった議論が国会でおこなわれることを強く望んでいます。しかし同時に、私たちは今この瞬間、食べるものもなく、孤立し、誰にもSOSを発することができずに苦しんでいる方がいらっしゃることを知っています。
そして、全国から日々相談を受けとめている立場として、より具体的な貧困対策にのビジョンを策定していく必要性を強く感じています。貧困対策は今やこの国の持続可能性を考える上での最優先課題の一つでもあるのです。
10月22日に衆院選をむかえるすべての政党及び候補者のみなさまへ。
貧困を社会的に解決したい。私たちの想いは、ただその一点のみです。そして、その困難な道を拓くためには、政治の力がどうしても不可欠です。私たちは、真摯に貧困の現状と実態を見つめ、困難な状態に陥っているすべての人の声を受けとめて社会に還元し、必要な制度や施策の実現につなげていく政治家を求めています。
私たち、〈もやい〉としては、以下の施策の提案をおこないます。
最低限度の生活を守るために
◆低所得者向けの簡素な金銭給付
消費増税や物価上昇への手当てとして単発でなく継続しての給付措置
◆生活扶助基準引き下げの中止と引き上げの検討
生活保護世帯への手当てとして削減の中止と物価上昇をうけての基準引き上げ
◆自然増が続く社会保障費負担のための消費税以外の財源の確保
医療・年金・介護・子育て等の各施策の社会保障税源の確保
◆安心・安全に働ける場の確保
最低賃金の底上げ(全国一律1500円以上)や社会保険の適応範囲の拡充、労働基準法の順守徹底や労働環境・待遇の改善
◆低所得者向けの住宅政策の拡充
求職者向けでなく低所得者向けの住宅手当等の住宅政策の創設・拡充
◆高等教育無償化への取り組み
給付型奨学金の拡充と高等教育の授業料等の減免や無償化に向けた取り組み、生活保護家庭の世帯内進学(就学)を認める運用への転換
社会保障のビジョンの転換
◆個人単位の社会保障へ
特定の家族のあり方や世帯の状況へのサポートから個人単位での社会保障へ
◆ひとり一人のニーズに合わせた社会保障を
子ども・障がいや疾病・高齢など状況に応じた現金給付型の社会保障の創設・拡充
◆社会保障の財源についてのより広範な議論を
消費税以外の税源による社会保障財源の確保についての具体的な議論
◆「貧困」を知るために
貧困の実態や背景にあるリスク要因についてのパネル調査を含む調査研究
以上